小道を通って、スズの塔へ向かう。木々は赤く染まっており、風とともに葉を散らす。足元は、落ち葉ばかりだ。踏みながら歩くと、かさりと音がする。一年中紅葉が見られる、エンジュの名所だ。
「綺麗。ずっと紅葉なんて、なんだか時間が止まっているみたい」
「そうだな。この道は、美しい。またキミと美しいものを共有出来て、良かった」
「えへへ。私も、嬉しいです」
女が微笑む。女が笑うと、ゲンガーも笑う。それに釣られて、ガラガラも微笑みを見せる。2匹は、いつの間にかすっかり打ち解けたようだ。2匹とも、がさがさと落ち葉を楽しそうに踏み鳴らしている。
小道を抜けると、スズの塔に着いた。とても高い。圧倒される高さだ。
「高くそびえる、九重の塔……。この塔のてっぺんが、ホウオウが身を休める場所とされている……と。
あら、一般の人は登れないんだって。残念」
女がガイドブックを読み上げる。この街は歴史と伝統をよく守っており、様々な言い伝えがある。伝説の3匹の次は、ホウオウと来たか。虹色の羽根を持つ、その派手な外見から、カントーでもそこそこの知名度があるポケモンだ。是非とも見てみたいものだが、登れないのなら仕方ない。
「キキョウにも、塔がある。そう高くないが、登れるはずだ。寄るか?」
「行きたいです! ガイドブックにも書いてあった。マダツボミの塔、だよね」
「決まりだな。行くぞ」
小道を戻る。ゲンガーとガラガラは、遊んでいたのか、落ち葉にまみれていた。身体の落ち葉を払い除けながら、ついてくる。
エンジュを出て、道路を進む。やはり、狭い道だ。少々歩きづらい。木々には小さなポケモン達が住み着いていて、時に顔を出す。女は先程の3体を探しているのか、周りを見回しながら歩いている。
「うーん、簡単には見つからないか」
「あの速さだからな。見つけても、逃げられる可能性がある」
「一応、対策は考えてあるから大丈夫。捕まえられるかは、分からないけど」
何か考えがあるようだ。手に入れば、強力な手駒になるだろう。
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