西へ/北風を追う

鐘屋横丁

     

「くそ、何だったんだ、さっきのポケモンは」
「速くて、全然目で追えなかった……。赤いのと、黄色いのと、青いの」
「戻ろう。ここにはもう、何もないようだ」
 階段を登り、地上に戻ると、人が集まり始めていた。
「……大きなポケモンが突然飛び出して来て……」
「なんだったのかしら……速くて……」
 恐らくは、外にいた人々だろう。先程のポケモンの話をしていた。どのポケモンも美しく、神秘的なオーラをまとっていたが、とにかく動きが速かった。今頃はもう、街の外かもしれない。台風のような奴らだ。
「ねえ、これ」
 女が、ガイドブックのページを指差す。そこには、この街の言い伝えが書いてあった。
「……かつて3体のポケモンがいた。ホウオウによって死から蘇った。名を、スイクン、エンテイ、ライコウ」
「あの3体の事なんじゃないか、って」
「そうかもしれん。伝説のポケモンに会えた、という事か。幸運だったな。ひどい目にあったが」
「普通のポケモンじゃないよ、絶対。あの逃げ足が無かったら、捕まえてたのにな」
 女はそう言って、足元の小石を蹴飛ばした。ゲンガーがそれを追いかける。
「この辺りが奴らの縄張りなら、歩いているうちにまた出くわすかもしれんぞ」
「会ったら、捕まえます。きっと強い」
 真っ直ぐな目に、闘志が燃えている。すっかり、やる気になったようだ。
「さて。街をもう出るかね? 塔はもうひとつあるが」
「いえ、行きたいです!」


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