食事を済ませ、支度をして宿を出た。ゲンガーとガラガラをまたボールから出す。ゲンガーは、大きなあくびをした。ガラガラは、物珍しそうに辺りを見回している。
街の中に出て、ふたつの塔へ向かう。
「先に、焼けた塔を見ようか。昔は、こちらも高い塔があったらしいが」
「うん。ガイドブックに書いてあった。雷で焼けちゃったんだって」
街の北西に、塔はあった。……確かに焼け焦げていた。火事の後、そのままの状態で保存してあるようだ。
中に入る。煤けた場所だった。手入れをしていないのだろう。野生ポケモンも、かなり入りこんでいるようだ。ドガースが、ふよふよと浮いていた。外には見物する者が何人かいたが、中には居なかった。
床板が軋む。奥に階段があるから、地下にも部屋があるようだが、床板が抜やしないだろうか。
「気をつけろよ」
「はい」
ゆっくりと、階段まで歩く。階段の下からは、冷たい風が吹いてくる。
階段を降りた。地下は薄暗く、やや寒い。何者かの気配があった。部屋の中央か。ゲンガーは怖いのか、女の影の中に隠れてしまった。ガラガラは、身構えている。
「……何か、居るな」
「ポケモン……?」
部屋の中央に近寄った時、それは突然始まった。
みっつの、咆哮。3体のポケモンが、そこには居た。並のポケモンではない。どこか神聖な雰囲気と、どっしりとした威圧感がある。
姿を捉えた次の瞬間、3体は一斉に駆け出した。部屋の中を、縦横無尽に走り回る。そして、天井に向かって跳び上がった。
薄い床板があるだけの天井は、3体によっていとも容易く破られた。崩れる。見上げている女の頭上に、床板が、落ちてくる——。
「避けろ!」
女は、動けないでいる。走った。女に向かって。庇うように、抱きとめた。崩れる天井から、離れた。ドサドサと大きな音を立てて、背後に床板が落ちて来た。危なかった。もう少し遅ければ、下敷きになっていた。
「大丈夫か」
「あ……ごめんなさい、動けなくって、わたし。大丈夫です」
女は少し狼狽えた様子だったが、怪我はないようだ。安堵する。
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