食事を済ませ、また道路を歩く。スリバチ山が見えた。人は、まばらだった。ここから先は山と、湖があるだけだ。観光客はエンジュに比べると、あまり居ないだろう。
「もうすぐ着く。すまない、随分歩かせてしまったな」
「いえ、大丈夫です。歩くのは、慣れてるし」
「そうか。
チョウジは、小さい町だ。支部は地下にある。視察が終わったら、湖を見に行こう」
「はい!」
もう、手は繋いでいなかった。女の右腕には、今はゲンガーが浮き上がってじゃれついている。甘い気持ちに浸っているのも悪くはなかったが、団員たちに見られると、流石に気まずさがある。
チョウジに着いた。すぐに、支部の入り口を目指した。店の地下にあり、入り口は偽装されている。
「いらっしゃい」
土産物屋に入ると、店主がこちらを見ずに呟いた。
「……やあ。いかりまんじゅう、箱で貰えるかね。支払いは、ギャラドスカードで」
「そ、その合言葉は……サカキ様!」
店主は驚いて、ようやくこちらを向いた。
「ご苦労。下に、行ってもいいかね?」
「へえ、只今開けますんで!」
店員たちは、店の奥の畳を一枚どけた。地下への階段が、そこにはあった。
「うむ。君たちは少し、陰気だな。一応は土産物屋だ。もっと、笑いたまえ。客が逃げてしまう」
「は、はい!」
階段を降りる。女は、驚いた顔をしながら後について来た。ゲンガーも、目をパチパチとさせている。怖がっているのか、身体の下半分は女の影の中に隠れている。
長い階段は、薄暗い通路に続いている。通路に着くとまもなく、出迎えがやって来た。
「お待ちしておりました、サカキ様」
「アポロか。久しいな」
ジョウトを任せている、忠実な幹部の一人だった。その目には喜びの色が見える。
「ご無沙汰しております。この度は遠路はるばるお越し頂きまして、ありがとうございます。
さあ、参りましょう。お客人もご一緒に」
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