勝利の鍵は

鐘屋横丁

     

 残りは1体ずつ。もう、分かっていた。ボールを手にする。カタカタと、それは小さく震える。女と自分の間に多くの言葉が要らないのと同じで、此処においても、多くの言葉は要らないのだった。
「行くぞ。我々は、勝つ。」
 サイドン。場に出した。咆哮する。命じた事は、極めてシンプルだった。
「これで、終わらせます」
 女がボールを放る。出て来たのは——モルフォン。
 何よりも早く、サイドンは飛びかかった。モルフォンは、飛行タイプではない。ボールから出て、少し時間が経たないと、そう高くは飛べない。
 ——サイドンの腕が、届いた。
 モルフォンが、地に落ちる。必死に羽ばたき、もがいている。サイドンは、その身体にしがみ付き、押さえつける。
「モルフォン、サイコキネシス!」
 モルフォンは、間違いなく技を出した。強烈な精神攻撃。だが、サイドンは耐えている。キラキラと、モルフォンの鱗粉が散る。猛毒だ。当然、サイドンは吸い込んでいるだろう。
「そうだ、押さえ込め、サイドン!」
「モルフォン! 逃げて! お願い! サイコキネシス、もう一回!」
 二度目の攻撃。だがサイドンが、ニヤリと笑う。目が、もう開いていない。鱗粉にやられて、潰れている。毒や麻痺も、きっと食らっているだろう。
「絶対に、離すな、サイドン! いわなだれ!」
 叫んだ。サイドンはモルフォンを完全に組み伏せると、いわなだれを浴びせた。
 ……距離を取れば、以前のトキワジムの時のように小細工に翻弄される。一気に行け。地面に、引きずり下ろせ。あらかじめ、命じたのは、それだけだった。サイドンは、もう立つのがやっとだった。目は開かず、鱗粉にまみれ、砂埃にまみれ、身体には毒がまわっているだろう。だが、力強く、そこに立っていた。
「モルフォン 戦闘不能。試合終了」
 ……勝った。


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