「くそっ……!」
届かなかった。あと一歩のところだった。
いつの間にか、劣勢に立たされてるような気がした。……いや、そんな事はない。弱気が過ぎる。残りの手持ちは、付き合いの長い奴らだ。簡単に、負けはしない……!
「ニドキング! あばれる!」
ボールから出たニドキングの動きは、素早かった。フシギバナに飛びかかり、噛みつき、拳を浴びせた。フシギバナは、殆んど反撃をする事も出来ず、沈んだ。
「フシギバナ 戦闘不能」
「っ……マタドガス! えんまく!」
女の目が、真っ直ぐこちらを向いている。もう、あるはずの歓声は、聞こえていなかった。女の目と、自分の目が此処にあり、ぶつかり合う。全く触れていないのに、熱いものを、強く胸に感じる。
マタドガス。ベトベターの次に捕まえたと、聞いた。女にとって、付き合いの長いポケモンだろう。あっという間に、えんまくの煙で場は何も見えなくなった。ニドキングは、匂いで追いかけようと、しきりに鼻を動かしている。
「マタドガス、ダブルアタック!」
見えないところから、攻撃が飛んでくる。ニドキングは、避けきれなかった。だが、ダメージは大きくない。耐えきれる。
「ニドキング、落ち着いて、気配を探れ。惑わされるな」
ニドキングは頷くと、目を閉じた。煙の流れ。匂い。それらを出しながら、浮かぶ影が、敵だ。
「そこだ!」
飛びかかる。当たりだった。逃がさない。爪を、歯を、食い込ませる。……だが、次の瞬間、強い光がマタドガスを、ニドキングを包んだ——
爆発音。
「だいばくはつ。ゼロ距離よ」
女の口元には笑みが見える。
……やられた。先程のこちらのゴローニャより、完璧なタイミングだった。こうして、精神的に揺さぶって来る。思わず、圧倒されそうになる。これも、戦い方の一つだ。
「マタドガス 戦闘不能」
「ニドキング 戦闘不能」
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