勝利の鍵は

鐘屋横丁

     

「くっ…! 戻って! 行くよ! フシギバナ!」
 女の顔に、少し焦りが見える。しかし、まだまだ、闘志に燃えている目だ。
 バトル場に、フシギバナが放り込まれる。大きく吠えると、背中の花を揺らした。ゴローニャが、ちらりとこちらを振り返る。頷いた。それが指示になる。自らの役割を、よく理解している。
「フシギバナ、はっぱカッター!」
 葉の刃が、襲いかかってくる。まともに食らっては、ひとたまりもないだろう。ゴローニャは、毒も受けている。
「あなをほる!地中を、進め!」
 ゴローニャが、穴の中へ消えた。
「フシギバナ、出て来たところにつるのムチよ! 周り、警戒!」
 やがて、地鳴りがした。ゴローニャが、フシギバナの真後ろに飛び出す。
「つるのムチ——」
 女が、命じたのとほぼ同時だった。
 ゴローニャの身体を光が包む。身体が、大きく膨らむ。熱を、ありったけ、放った。
「だいばくはつ」
 爆発音。
 ゴローニャは燃えつき、倒れた。
「ゴローニャ 戦闘不能」
 あなをほるで接近して、ベストのタイミングで放つ予定だった。つるのムチで、少し距離を取られた。警戒されていたか。7割程度の威力になってしまった。身体にまわった毒で、ゴローニャにも時間はなかった。フシギバナは、大きなダメージを受けてはいるが、まだまだ動けそうだ。
「行け! ガルーラ!」
 ノーマルタイプを繰り出す。確実に、ここは削っていきたい。
「フシギバナ、どくどく!」
 フシギバナが、毒液を吐いた。だが、本命は、きっと次だ。
「やどりぎのタネ!」
 続けざま、種子を、ガルーラに植え付ける。どっしりと構えて、回復をするつもりだ。
 ……緩急自在な攻めを見せてくる。巧みに自分のペースに持ち込もうとしてくる。だが、付き合ってやるつもりは毛頭ない。
「ガルーラ、ピヨピヨパンチ! メガトンパンチ! 攻め手を休めるな!」
 やどりぎのタネで吸い取れるのは、わずかな体力に過ぎない。攻めなくては。ゴローニャのだいばくはつのダメージを、無駄には出来ない。ガルーラの身体にも、毒がある。今は、とにかく前に進まなくてはならない。
「フシギバナ、つるのムチ! 押さえて! もう一発でも、食らっちゃダメ!」
 フシギバナも、限界が近そうだ。つるを伸ばしてくるが、力を感じない。だが、ガルーラの拳も、そこで止まった。
「ガルーラ 戦闘不能」


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