女はゲンガーをボールに戻すと、手をくるくると回した。知っている。あの合図だ。女の足元の、地面がぐにゃりと動く。団員達はどよめいた。やがて地面は色を変え、その姿を現す——ベトベトン。
「ヤミカラス、つばさでうつ攻撃! いいか、地面には降りるな!」
「ベトベトン、捕まえて!」
ベトベトンは、半身が地面に混ざったまま動いている。その間合いは、まだわからない。ひとたび間合いの地面に触れれば、ヤミカラスの小さな身体はあっという間に飲み込まれてしまうだろう。
……こちらの攻撃は、ほとんど通じていない。あちらの間合いをもう少し確かめて、交代をさせよう。そう思ったとき、ヤミカラスがベトベトンのちょうど真上を飛んだ。
女はにっと笑い、天を指差しながら技を命じた。
「かみなり!」
「……ッ!」
一筋の細い雷光が、ヤミカラスに当たった。命中率のあまり高くない技だ。ヤミカラスを捕まえて、地面での戦いに持ち込むフリをして、ずっと、タイミングを計っていたのか。羽の焦げたヤミカラスが、地面に落ちた。
「ヤミカラス 戦闘不能」
……良くやった。初戦で勝利し、相手の選出を乱した。後は、後続で何とかする。してみせる。ヤミカラスをボールに戻した。
「ゴローニャ! じしんだ!」
「ベトベトン、とける!」
「耐える気か! 一気に行け!」
ゴローニャは場に出ると、一瞬、苦しそうな顔をした。……毒だ。ベトベトンが歩いた跡には、毒が残る。ヤミカラスの相手をしながら、バトル場を這い回っていた。だが、ゴローニャは怯まない。力強く、地面を揺らした。ベトベトンに強い一撃が入る。ダメージに耐え切れず、ベトベトンはその場にへたり込んだ。
「ベトベトン 戦闘不能」
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