「……今夜は、空いてるか」
「はい」
「最近はなかなか時間が取れなくて、すまなかった。今夜は一緒に、過ごそう」
「はい!」
季節は冬。吐く息は白くなり、移動の間に吹き付ける風は、とても冷たかった。部屋に入って、まずはお風呂で暖まる事にした。
「ふー、あったかい」
「寒いのは、苦手か?」
「うん。暑い方が、まだマシ」
「そうか。逆だな、俺は。」
「逆かあ」
「生まれが雪の多い所だからな。寒さには、強い方かもしれない」
「えっ、そうなんだ」
「まだ、かなり幼い時にトキワに越してきた。それからは、ずっとカントーだな。
雪と、広い大地の風景が、わずかに記憶に残っている程度だ。キミの出身は?」
「シオンタウンの近く。小さい町だよ。工場が多くて、ベトベターとかドガースがうじゃうじゃいる。小さい頃から毒タイプのポケモンとは、よく遊んでたな。最初の1体が、あのベトベトン」
「ほう、長い付き合いだったか。あれは臭いも出さず、よく育てられている、と思った」
「食事に気をつけてあげるの。変なもの、食べないように。後はいい匂いのするきのみを毎日あげれば、大分抑えられるよ」
雪の多い所、か。またひとつ、あなたの事を知ることが出来てとても嬉しい。思うけど、言わない。ちょっと恥ずかしい、から。
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