「……ジムバトル、か」
わたしが持っているジムバッジは、たったのひとつだ。あの人に貰った、グリーンバッジ。大事にして、いつもピカピカに磨いている。
ここに来る前は、……あまり居心地の良くない家を飛び出して、カントーを一周する旅をしたけど、なんとなくジムには興味がわかなかった。その後に控える、四天王や、チャンピオンというものにも。その事を人に話すと、勿体ない、君ならジムバッジは取れるだろう、とよく言われる。よく言われるから、実際そうなのだと思う。
ポケモンバトルは、好きだ。バトルを通して、人と対話出来るのは楽しいし、強くなりたい。でも、それだけだった。名誉が欲しいとは、少しも思わなかったし、自分が満足する強さより上の力は、別に欲しくなかった。
そんな自分のことは、あまり好きにはなれなかった。つまらない人間だな、本気を出す事もなく、このまま終わるのかな、と思っていた。……あの日、あの人と戦うまでは。
「教官! 手合わせの続きお願いします。次は僕です」
「あ、はい! ごめんなさい、少しぼーっとしちゃって」
今は目標がある。向上心もある。自分以外の、誰かのために頑張れている自分の事は、前より好きだ。
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