天使の寝顔

鐘屋横丁

     

「今日はジムの方に顔を出す。今後は、少し多くなると思っていてくれ。」
「ふむ、承知しました。今まで随分と放っておかれたのに、何かありましたかな?」
「特に深い意味はない。トレーナー達から、得られるものもあると思っただけだ」
「なるほど。ご自身の研鑽も考えていらっしゃる。さすがサカキ様」
「お前には全ての支部の視察に行って貰いたい」
「はっ」
「我が軍は、悪だ。だが、粗暴であることは控えるべきだ。末端の団員の行動には酷いものがあると聞く。軍規と罰則を見直せ。今より、厳しいものにしろ。行く当ての無い者、ならず者、様々な団員がいるが、ものの分からん馬鹿者は、軍の力で言う事を聞かせる。
 それから、スカウトにももっと力を入れろ。強い者は戦闘訓練の必要が無い。貴重な人材となりうる」
「はっ。全てこのマイムにお任せ下さい」
 マイムは一礼すると、姿、部屋の外へと駆けて行った。
 その姿に女は無邪気に興奮した様子を見せた。
「……すごい!本当に、メタモンなのね」
「ああ。ベースは人間だ。人間に、メタモンの能力を植えつけたようなものだ」
「バトルで使われてたら、勝てなかったかも」
「どうかな。変身能力に長けているだけだからな。使う気は無かった。
 ……お前にも居るだろう。そういう、6体目は」
 女は、目を丸くして驚いた。
「凄い。いつから気づいていたの?」
 そう言ってくるくると、手で指示を出すと、彼女の足元から、1体のポケモンが姿を現した。ベトベトン。地面に溶け込む性質を持つが、どんな地面にも対応するのには、相当な訓練が必要だろう。本来あるはずの強い刺激臭もない。
「一応、地面を専門としてるからな。足元の異変には気づくさ。
 確信が持てたのは、キミの側に立つようになってからだが」
「確かに、この子もバトルで使う気は無いかな。見た目が派手な技だけ覚えさせてるんだ。護衛用って感じかな」
 女が手をくるくると回して指示をすると、ベトベトンはまた地面に戻った。


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