「だが!
私はその後、彼女を捕縛し、懐柔に成功した! 彼女は我が軍と、この私に忠誠を誓った!」
——ざわざわざわっ!
「故に、我々は、より強力な同志を得たと言える!
さあ、来なさい」
会場の隅に隠れていた女を、隣に呼び寄せる。顔は少し緊張した様子だが、堂々とした足取りで、自分の隣に立った。会場は大きな歓声に包まれた。
「うおおおおおおおー!」
「サカキ様! 万歳! サカキ様! 万歳! サカキ様! 万歳!」
「静粛に! 彼女には、戦闘要員として十分な働きを期待している。また! 戦闘訓練の見直しや、教官としても働いてもらうつもりだ。
少女だからと侮り、彼女の命令に従わぬものは、私が許さぬ!」
「うおおおおおおおー!」
「サカキ様! 万歳! サカキ様! 万歳! サカキ様! 万歳!」
「静粛にしたまえ!さあ、キミも挨拶を」
女にマイクを渡すと、すうと小さく呼吸をして、話し始めた。
「初めまして。お仕事、頑張ります。
ポケモンバトルで負けたことは、まだ、ありません」
おお……と団員達の声が漏れる。「あんな小さな子が」「信じられない」と言った囁きも聞こえる。彼女は最後に笑顔で、こう付け足した。
「あと、サカキ様の愛人です」
……………………。
空気が一瞬にして凍りついた。
……いかん。これはいかんぞ。慌ててマイクを奪い取った。
「以上で今日の集会を終了する。各自持ち場に付け! 解散!」
「……」
「えっと、あの、ごめんなさい……なんか他に言うことないかと思って…………」
女が、オロオロと言い訳を述べる。しかし、もう済んだことだ。怒る気にもならない。
「いやー、しばらくは団員達はこの話で持ちきりでしょうねえ」
マイムがクックック、と笑う。
「……だろうな……」
「まあ、人の噂も七十五日と言いますし。あれ、四十九日でしたっけ?
ともあれ。そう気に病む事もないでしょう。ボスなのですから。もっと堂々としていればよろしい。して、本日の予定は如何なさいますか?」
いつまでもこんなくだらない事で落ち込んでる場合でもない。無理矢理に頭を切り替える。
~ 3 ~