数時間後。
アジトの最も奥の部屋で、俺は頭を抱えていた。
「……ほう。それで、まんまとあの少女を抱いてしまった訳ですか」
「返す言葉が無い」
「まあ、私には男女の仲の事は良く分かりませんから。
英雄色を好む、と言う言葉もありますし、結構な事です」
そう言って隣で笑う部下の名前は、マイム。幹部であり、この部屋に入るのを許している、数少ない団員のひとりだ。
「あの時のボスの顔は、しばらく忘れられそうに無いですね」
「……言うな」
「はははは。サカキ様、貴方らしくないミスです。
可笑しくて、可笑しくて、つい笑ってしまうのです。お許しください」
「……」
朝。あの後は女を連れて、アジトに戻り、緊急召集命令をかけた。遠くの者達も、通信で様子を確認できるようになっている。アジトの広間に集まった団員たちは、急な召集に少し不安そうに見えた。昨日の、ジムでの自分の敗戦の事を知っている者も、いるかもしれない。
「諸君」
自分が口を開くと、辺りは静寂に包まれた。
「急な召集にも関わらずよく集まってくれた。
既に知っている者もあるかもしれないが、
我々は、ひとりの少女に2度にわたってカントーでの重大なプロジェクトを壊滅に追い込まれた。
私もその時敗北をしている」
団員たちがざわつく。実際に戦った者も中にはいるだろう。
「静粛に。少女にポケモンバトルの実力があるのは明瞭だ。
昨日、私はトキワジムにおいて、彼女と3度目のバトルを行ったが、やはり敗北した」
——ざわっ!
ざわめきが大きくなった。大きく動揺する者、顔を覆う者、涙を浮かべる者もいる。
~ 2 ~