散る花、咲く花

鐘屋横丁

     

「……どうして」
 少女の顔つきが少し変わった。
「あのなあ……」
「どうして、ロケット団を解体するなんて言うの」
「……ッ!」
 真っ直ぐな目が自分を責め立てる。勝利しか知らないような、真っ直ぐな、この目が——
「私に、負けたから。
 それは、言い訳なの?」
「……違う」
 違う。はずだ。こんな少女に。何が分かるのか。敗北者の気持ちが。敗北してなお、君臨せざるを得ない屈辱を。
 地面を見る。
 自分を慕うもの、崇拝するもの。行く当てのないもの。数が多い。大きすぎる。大きすぎるのだ。
「……」
「……」
 沈黙は良くない。
 沈黙は良くない。
 沈黙を破るために、ひとつの疑問を口にした。
「……何故、愛人なんだ?
 キミのような年の子が使う言葉ではないよ」
「息子が、いるんでしょう。
 団員たちが話しているのを、たまたま、聞いたの。奥さんが、居るのかなって」
「ああ……」
 一体どこから漏れ出たゴシップだろうか。団員たちの好きそうな話だ。それは、事実だった。
「昔抱いた女が子を産んだ。それだけの事だ。
 写真でしか、私は姿を知らない。今はキミと、同じくらいか、少し下の年の子だ。
 特に妻帯はしていないし、その女とももう、随分前に切れた」
「……そうなの」
「私はそういう男だ。
 キミはもう少し、自分を大切にしたほうがいい」
「……」


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