咆哮!
勢いよくボールから飛び出したサイドンは鼻の大きな角を振り回し、威嚇する。だが、フシギバナは全く怯む様子もない。少女は表情を変え、こちらを睨むようにして指を突き出す。
指示が、来る。
「ソーラービーム!」
大技で勝負に来たか!ならば、こちらも勝負に乗ろうという気持ちになった。ソーラービームは、広範囲に渡り太陽光の波動を放つ技だ。食らえばサイドンの戦闘不能は避けられないだろうが、エネルギーの充填に時間がかかる。
「サイドン」
声をかける。こくりと頷く。まるで、今から出される指示を知っているかのように。
「じわれ」
指示を受け、サイドンがゆっくり、踏ん張る。地面を踏みしめる。激しい音を立てて、地面にひび割れが出来る。
じわれは通常のバトルでは滅多に使われない技とされている。技そのものの成功率が低く、発動も遅い。飛んでいる相手にも当たらない。など理由は多い。サイドン自身も技を身につけてから、殆ど放ってないだろう。
だが、見事だ。とてつもない大きさのひび割れが、サイドンの足から地面を走り、フシギバナに迫り、真下の地面を壊す。
そして、地面のひび割れがフシギバナを挟み込む!巨体のその身は、エネルギー充填中という事もあって攻撃を避ける事が出来ない。
判定マシンの機械音声が勝敗を告げる。
「フシギバナ 戦闘不能」
……どうだ。呑んでやったぞ。
気づくと、手に汗を握っていた。先程の冷たさは、少し和らいだ。
サイドンは、少し肩で息をしているように見えるが、戦闘でダメージは受けていないはずだ。
やれる。これで相手も五体目だ。ほぼ無傷のフシギバナを失ったからか、少女の顔には若干の焦りが見える。
~ 2 ~