「……レビィ、今日の朝にしてくれ。頼む」
「ビィ!」
あまりの眩しさに、目を瞑った。耳にバチバチという五月蝿い音が聞こえて、気づくとそこに森は無かった。
「ここ……は」
見回すと、ロケット団のいつもの部屋だった。スマホロトムを見ると、今日の日付のまま、時間だけが朝に変わっている。
「成功したのか」
席に座り、PCを立ち上げる。リングマ希少種のレポートをもう一度読んだ。
「おっと」
スマホロトムの、リマインダー機能を少し弄る。
さて。……どう、変えて行くべきか。女に行くな、と言っても聞かないだろう。気をつけろ、と声をかけてもどうなるか分からない。で、あれば。
「おはようございます、サカキ様」
「おはようございます、ボス!」
「お早う」
マイムと女が、揃って部屋のドアから入ってきた。
「お早いですね、サカキ様」
「ああ。今日の任務が気がかりでな」
「私の事? 心配しなくても大丈夫だよ」
「そうだな。やられるとは思ってはいない。だが、あのリングマ希少種」
「うん」
「じめんタイプなのではないか、と思ってな」
「……まあ、報告では確かに、じめん技を使ってきた話もあるけど」
「うむ。そうと来たら、じめんタイプの専門家の、この俺が行くべきだろう。同行する」
「え、えぇ〜!?」
女は驚いて声を上げる。
「サカキ様、それでは本日のご予定は……」
「全てキャンセルだ。適当に設定し直してくれ」
「は、はい……とほほ……」
「さあ行くぞ、リニアはもうじきだろう」
「えっ、はっ、はい……」
女は、生きていた。当たり前だが、こんなに嬉しい事はない。輝く瞳。呼吸する鼻と口。温かそうな身体。思わず抱きしめそうになったが、堪えた。
マイムも、元気そうだった。あんなに泣き叫んで取り乱す姿を、もう見たくない。マイムのためにも、女は絶対に取り戻す。
列車がコガネに着いた。
駅には、ランスが迎えに来た。
「サカキ様! ご無沙汰しております。この度は作戦に加わって下さるとのお話、心強いです」
「うむ。息災で何よりだ。場所は、ここから近かったな」
「はい。南東の岩山です。ヒメグマ達の集落があって、そこに。我々も同行します」
自分と女、ランス、他団員が3名。計6人で岩山へと向かった。山は険しく、岩ポケモンとの戦いもあったが、なかなかヒメグマは見かけなかった。日は高くなり、我々は何度目かの休憩を取った。
「なかなかいないね、ヒメグマ」
ふう、と女はため息を吐いた。
「ポイントでは、そろそろのはずです。好物のあまいミツを持ってきましたので、木に塗りながら進みましょう。出てくるかもしれません」
「そうだな。いい考えだ」
「恐縮です」
ランスの作戦通り、木にあまいミツを塗りながら進んだ。木よりも、ランスの抱えている容れ物からとてつもなく甘い香りがしており、このまま匂いにつられて出てくるのではと思った。
「あっ! いたよ!」
女が声を上げる。指差した先には1匹のヒメグマが歩いていた。
「待ってー!」
ヒメグマはすぐ逃げ出した。女も、追いかけて走り出す。ぞっとした。山が崩れるのが、この先であれば。
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