注意書き
前話(宇宙の果ては、暗闇)を読んでからの方がわかりやすいと思います。
ムサ→コジ、サカムサと始まってコジムサに落ち着きます。前話よりは明るいです。
前話(宇宙の果ては、暗闇)を読んでからの方がわかりやすいと思います。
ムサ→コジ、サカムサと始まってコジムサに落ち着きます。前話よりは明るいです。
その夜は、最悪だった。
窓から見える素敵な夜景も、あたしの目には霞んで見える。この部屋が好きになれない理由がわかった。高いところに閉じ込められてるような気分になるからだ。
サカキ様は、何か嫌な事があったらしい。ボトルを次々と開けて、少しイライラしながら飲んでいた。あたしはいつもの通り隣に座ってカシオレを飲みながら、サカキ様の小難しいビジネスの話に適当に相槌を打っていた。
「ムサシ」
サカキ様が、不意にこっちを向いた。完全に目が据わっている。
「はい」
「お前は、良いな。明るいところがいい。暗い女は苦手だ」
「は、はい。ありがとうございます」
サカキ様は、あたしの顎を掴んで顔を引き寄せた。
「美しい瞳をしている。唇が厚いのも好みだ。私の母親の、若い頃によく似ている」
「は、はあ……」
「当分は、お前を離さないぞ。今晩も、楽しませて貰——」
サカキ様の大きな身体がよろめく。
「サ、サカキ様! 飲み過ぎですよ!」
慌てて、身体を支える。当たり前だけど、重い。
「何、心配するな。まだ、まだ飲めるとも……」
そう言いながら、グラスに伸ばす手はフラフラだ。ダメだこりゃ。あたしは立ち上がってサカキ様の身体を引っ張った。
「ホラサカキ様、ベッド行きましょう、ベッド」
「んん……? 今日は随分積極的だな、むしゃし……」
「ちっがーう! もーただの酔っぱらいじゃないですか! さあ歩いて!」
「んん……」
サカキ様はあたしの手に引かれて、よたよたとベッドへ向かう。テーブルからベッドまでが遠い。この部屋、広すぎるのよ!
「はい、横になって。ネクタイ外しますね。お水いりますか?」
「頼む……」
近くのウォーターサーバーから水を汲んで、サカキ様に渡す。
「はい、お水です。吐かないで下さいよ!」
「すまない……」
「いえいえ」
水を飲んで、真っ赤だったサカキ様の顔色が少し落ち着いてきた。
あたしは、ウロウロする訳にもいかないからベッドに腰掛けて様子を見てる。今日は介抱だけで終わりなのかしら。まあ、そんな日もあるわよね。
しばらくすると、隣で横になっていたサカキ様から寝息が聞こえて来た。やれやれ。あたしも寝ようっと。
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