その場を離れて、バスルームに向かった。まだ、胸がドキドキする。酒のせいなのか、キスをされたせいなのかは分からない。いけない、あたし。これからこれ以上の事をするんだから、しっかりしないと。
バスルームもとにかく豪華だ。浴槽が広くて、3人くらいは余裕で入れそう。ふと、いつものメンバーで入るところを想像してしまった。いいな。みんなで入れたら、楽しいだろう。……やめよう。コジロウ達の事を考えると、胸が切なくなる。ここでサカキ様とこんな時間を過ごしている事を、みんなは知らない。本部から呼び出しが来たとか、いつも適当な事を言って誤魔化してる。いつか気づかれる日が来るのかしら。そしたらコジロウは、あたしを軽蔑するのかな——
「終わりました」
「うむ」
バスローブを着て、部屋に戻った。サカキ様は最後の一杯を飲み干して、バスルームに向かった。
「……はー。大きなベッド」
枕を抱いて、ベッドに寝転がった。高い天井を見上げる。
……失敗続きのチームを解散しない代わりに、夜の相手をする事。それがサカキ様の出した条件だった。最初は、ずいぶん戸惑った。そういう経験がないわけじゃないけど、まさかサカキ様と自分がそんなことになるなんて思ってなかったし、緊張で身体も全然反応しなくて、かなり難儀した。それでもサカキ様は構わないと言って、優しくしてくれた。
このスイートルームで、欲しいものは望めば用意してくれる。無口だけど冷たい訳じゃなくて、優しい。いつも余裕がある。顔も身体も、悪くない。……というか、とても良い。
普通の女の子なら、やっぱりキャーキャー言うんでしょうね。でも、あたしはそんな気にはなれないし、これからもならないだろう。
シャワーの音が止まった。いよいよだ。枕をぎゅうっと抱きしめて、自分の心臓の音を聞く。ドキドキしてる。期待なんかじゃない。緊張だ。ああ、またしちゃうんだ、あたし。ごめんね、コジロウ——
「待たせたな」
バスルームから出てきたサカキ様が、ゆっくりとこちらに歩いてくる。枕を元の位置に置いた。
サカキ様は、ベッドの上に座るあたしを抱きすくめ、またキスをしてきた。ねっとりと舌を絡めてくる。少し苦いのは、きっと煙草の味だ。あたしは自分から絡める事が出来なくて、ひたすらに口の中を犯されてる。いつもだけど、サカキ様のキスは長い。とろとろに、溶かされてしまいそうになる。
口が離れた。唾液が糸を引く。サカキ様はそれを舐め取って、あたしの事をゆっくり押し倒すと、あたしの上に跨った。バスローブを脱がされて、じっくりと裸を見られてる。本当はこの瞬間が恥ずかしくて、電気を消して欲しいなといつも思う。でも、言える雰囲気じゃないから言い出せない。
~ 3/5 ~