蜘蛛の糸

鐘屋横丁

     

「アポロ。心配することは、何もない。優しくしよう」
「はい……」
 ああ、その声で名前を呼ばれるとだめだ。何も逆らえなくなってしまう。全てを受け入れてしまう。もしかしたら、男はそれを分かっているのかもしれない。それでも、それでも……。
 男は私の身体を優しく抱きしめ、ベッドに押し倒しました。自分の胸が、どきどきと音を立てているのがわかります。聞こえているかもしれません。目の前には、優しいお顔のままのサカキ様。ちらりと視線を下にやると、鍛え抜かれたお身体が見えます。やはり、同じです。……そう。私はサカキ様に抱かれるのです。あの頃のように、幾度となく共に越えた素敵な夜をもう一度迎えるのです。
 優しいキスが、額に落ちてきました。頬。首筋。鎖骨と、ゆっくり降りてきます。
「んっ……」
「アポロ。大丈夫だ。力を抜いて……そう、いい子だ」
 サカキ様が、優しく諭すように囁いて下さいます。そうされると、とても気持ちがいい。
「あっ……ひぁ……ふ、ぅ……」
 温かい舌が、私の胸の突起を舐めて転がします。優しく、感じる場所を探るように、何度も。
「可愛い奴だ」
 頭を撫でられます。そうです。いつも夜はそうして、可愛がって頂くのです。久しぶりの愛撫に、身体全体が敏感になっているのを感じます。きっと、だらしない顔をしているのでしょう。それでも、こんな私を愛おしそうに見つめてくれるその瞳が、狂いそうになる程好きです。
「そろそろ、舐めてくれないか」
「はい……!」
 起き上がって、サカキ様の勇ましい強張りを口に含みました。先の方から下の方まで、教えて頂いた通りに丁寧に舐めます。ぴく、ぴくりと反応があると、感じていらっしゃるのかと思えて嬉しい。この後のことを考えて、びしゃびしゃと音を立てて丹念に濡らします。この大きいモノがこれから私の身体を満たしてくれると思うと、興奮にぞくりとします。
「もう、いいぞ。十分だ。上手いな」
「はい……」
 また、頭を撫でて貰いました。優しい言葉をかけて頂くたびに、心は跳ね上がり、更なる期待をしてしまいます。


~ 5/7 ~