夜の王

鐘屋横丁

     

「……おっと、もうこんな時間ですか。
 サカキ様、今日は失礼させて頂きます。明日またご意見頂けると助かります」
「そうだな。これ位にしよう。遅くまでご苦労だった」
「はい。サカキ様、教官殿。お先に失礼します」
 マイムが一礼して、部屋を出て行った。扉が閉まる。
「遅くなって悪かったな」
「いえ、大丈夫です」
「……倉庫には、掘り出し物が眠っているものだな。見たまえ、これを」
「!!」
 女は驚いて、それから少し笑うような反応をした。見せたのは、黒革の鞭だ。ぬるりと、鈍く光っている。
「昔、ポケモンの調教に使っていたものだ。あまり効果が出なくてな。そのうち、使われなくなった」
「……好きそう」
「好きだとも」
 にやりと笑ってみせる。女は微妙な表情だ。呆れているようにも見えるし、怖がっているようにも見える。
 鞭を机の上に置いた。
「こちらに来なさい」
「……はい」
 椅子に腰掛けたまま、女を呼び寄せる。すぐ近くまで歩いてくると、立ち止まった。
「もっと近くだ。前に来なさい」
 少し、椅子を引いた。机と椅子の間に隙間が出来る。その隙間に、細身の女はこちらを向いて収まった。
「そう。いい子だ。顔をこちらに」
 右手を伸ばして、女の顎を掴む。女は屈んで、その身をこちらに委ねてくる。左手で腰を抱いて支えた。自分の顔まで右手を引き寄せて、唇を重ねた。女の柔らかな長髪が頬に触れる。少し唇の感触を味わって、すぐに離した。
「もう、残っている者も居ないだろう。今日はここがベッドだ」
「ここで……」
 女は、恥ずかしそうだ。躊躇うような表情を浮かべている。無理もない。
「服を脱ぎなさい」
「……はい」
 女は恥じらいを見せながら、ひとつ、またひとつとゆっくり服を脱いでいった。
「ふむ」
 じっくりと、女の裸を見つめた。上から下まで舐めるように、犯すように視線を滑らせる。女は顔を赤くして、俯いた。


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