夜の王

鐘屋横丁


注意書き

名前ありオリ幹部が一人います(#3〜 マイム)。二人がSMプレイをします。
 
◆簡易あらすじ:トキワジムで最後の戦いに敗れたサカキだったが、少女はロケット団の解散は望まなかった。少女はロケット団の戦闘教官となり、世界征服の野望達成のためサカキ、マイムらと共に邁進する日々を送る。
 
◆表紙協力→ガバ子さんhttps://www.pixiv.net/users/2015447
 
テレビ出演(#12)の後の話です。性癖全開なのでやや注意です。痛そう・苦しそうなのが苦手な方はおすすめしません。

夜の王

     

 遠くに見える山が、夕日を飲み込んでいく。
 つい立ち止まって、眺めていたくなるような夕焼けだった。
 この頃は、日が長くなった。その分夜が短くなっているという事だ。それは夜の闇に生きる我々にとっては、些か都合が悪い。ビルの合間を吹き抜ける生ぬるい夜風も、あまり好きではなかった。夜は寒いくらいが丁度いい。
「おや、サカキ様」
 アジトの階段を降りると、マイムと鉢合わせた。両手で段ボール箱を抱えている。
「ちょうど良かったです。いくつかお仕事のメールが来てて、ご相談したい事が」
「話せ。お前も、こっちだろう。歩きながらでいい」
 廊下を歩く。マイムが、半歩遅れて後ろをついてくる。
「はい。ええと、まず雑誌のインタビューが3件。あとは、プロデュースのお話が来てますよ。ポケモンフードの」
「……私の写真がパッケージにあるポケモンフードか。買いたいと思うか?」
「あら、素敵だと思いますが」
 くすり、と笑い声が背後に聞こえる。冗談じゃない。仕事内容も、全く興味が持てるものではなかった。
「その類のは、断れ。インタビューは低俗な雑誌でなければまあ、良いだろう」
「かしこまりました。ではそのように返事をしておきます」
 歩く速度は、緩めなかった。それでもしっかりと、自分の歩幅に合わせて、半歩遅れてついてくる。
「すっかり、俺のマネージャーだな。お前は」
「板についてきましたかな?」
「ああ。何でも出来そうだな、お前は。有能だ。良い事だ」
「うふふ。サカキ様のためならなんだって出来ますよ。出来て、みせます。有能でい続けてみせますとも。それが私です」
「そうか」
 有能なものは、好きだった。人でも、ポケモンでも、道具の類でも何でもいい。マイムは、何をやらせても期待以上の成果を出す。その根底にあるのは、揺るぎない忠誠心だろうか。余計なことをしないのもまた、良かった。
 話をしているうちに、奥の部屋に着いた。
「ボス! マイムさん! お疲れ様です」
 女が明るい表情を向けてくる。
「はい、お疲れ様です。よいしょ、っと」
 マイムが机の上に段ボールを置く。
「これ、何ですか? なんか古そう……」
「昔の備品です。まだ沢山倉庫にあるのですが、とりあえず1個ずつ何種類か詰めてきました。サカキ様、要か不要か、仕分けを手伝って頂けますか。私では難しく……」
「いいだろう。中身を出せ」
「はい、ではまずこちらから。何かの試作品と見られます、黒いモンスターボールです」
 マイムが段ボールからボールを出す。埃を被っていたが、ボールは使えそうだった。見覚えがある。
「何年か前、捕獲率向上の研究で作ったボールだな。普通のボール同様に使用できるはずだ」
「なるほど。ではまだ使うという事で。次はこちらのギブスを……」
「ああ。それは——」


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