「さて、片付けなくっちゃ」
「手伝おう。皿洗いくらいは俺でも出来る」
「えっ! 悪いですよ、ゆっくりくつろいでて下さい」
「礼がしたいんだ。手伝わせてくれ」
「うーん……。分かりました、お願いします」
部屋に戻った。食器をシンクに運ぶ。4人分ともなると、少し多く感じる。スポンジに洗剤を付けて洗った。女は、洗い終わった食器を拭いていく。
「なんか、不思議です。こうしてるのが」
「そうだな。俺も新鮮だ」
「一緒に暮らしたら、こんな感じなのかな。なんて……」
女の顔が、少し赤い。
「一緒に暮らすか?」
「えっ!」
「まずは、部屋探しだな。ヤマブキのでかいマンションにするか? タマムシのはずれの方で静かに暮らしてもいい。家を建てるのもいいな」
食器が、カチャカチャと音を立てる。女の食器を拭く手が止まる。
「……それは、えっと……」
「冗談かと、言いたげな顔だな。俺はいつでも本気だ」
「うん。嬉しくて。信じられない」
「そうか。決まりだな。次の休みは、それに費やそう」
「はい」
女は少しうつむいて、また食器を拭き始めた。覗き込むと、うつむいた顔が赤い。口元を弛ませて、幸せそうに笑っている。それでいい。女の幸せのためなら、出来る事は何でもしてやりたい。
女の部屋は、綺麗に掃除がなされていた。本棚と、ベッドと、小さな折りたたみ式のテーブルと、姿見。本棚には漫画が並んでいた。
「なんか、恥ずかしい」
「綺麗な部屋じゃないか」
「そうかな。散らかってるけど、どうぞ」
促され、ベッドに腰掛けた。女も隣に並ぶ。
「……。そろそろ、1年経つんだね。一緒になって」
「ああ。早いものだな」
「きっと、これからも早いなって思いながら過ごすんだ」
「そうだな。そうかもしれん」
女の顔を見た。ふたりの目が合う。女は、微笑みながら目を瞑る。誘いだ。顎を掴んで口付けた。すぐに離す。女はまだ微笑んでいる。真っ直ぐな目をこちらに向ける。この目に、いつも心を狂わされる。
肩を掴んで、ベッドに押し倒した。女は少し、驚いている。
もう一度、口付けた。今度は、少し長く。絡めた舌が、暖かかった。少し堪能して、口を離す。女の目は蕩けきっていた。
「……このまま、するぞ。構わないな?」
「うん。ちょっと、狭いけどね」
「構わない。初めてキミを抱いた時も、狭いベッドだった」
「懐かしい。よく、覚えてるよ」
「そうか。あの後は反省して、その次は広い部屋で過ごしたな」
「それも、覚えてる」
女は笑う。愛らしい顔で。
「フッ。さあ、プレゼントを頂こうか」
「はい」
女は、躊躇う事なく服を脱いだ。
「……ほう」
~ 7/11 ~