「閣下!」
「こんにちは、閣下」
マイムとアポロが、こちらを見て微笑む。
「せーの!」
「サカキ様、お誕生日おめでとうございます!!!」
女が合図し、突如、3人がクラッカーを鳴らした。……しばらく、理解出来ずにぽかんとしてしまった。大きな音。火薬の匂い。舞い散るキラキラとした紙切れ。
「誕生日……?」
思わず口から言葉が漏れる。
「そうですよー!」
「間違いありません、12月26日!」
「まさかとは思いますが、お忘れで……?」
3人が次々に喋る。そうか、そうだった……。自分の誕生日を、すっかり忘れていた。
「……初夜」
「?」
「初夜では、なかったか。ふたりの」
今度は女がぽかんとした顔になった。そして、女の顔が赤くなる。
「えっ……た、確かに、この時期だったけど」
「参ったな。自分の誕生日に花を持ってくる、間抜けな人間になってしまった。そんな男の花で良ければ、受け取って欲しい」
そう言って、ブーケを渡した。なんとも、恥ずかしいものだ。自分の顔も、赤いかもしれない。
「ありがとう、ございます……」
女は耳まで赤い。とろんとした顔になってしまった。
「オホン!」
アポロが咳払いをする。マイムはニコニコと我々を眺める。
「おふたり共、仲がよろしいのは結構ですが、そういうのは……その……もっとこう……後になさっては頂けませんか。ケーキもありますし、我々もプレゼントを用意しております」
ブーケは、小さなグラスに入れられて、テーブルの上に飾られた。
テーブルの上のケーキには、「Happy birthday」の文字が書かれたプレートがある。少し手作りのぎこちなさが見えるが、立派なショートケーキだ。
「美味そうだな。頂こう」
「教官殿、スポンジから頑張って作ったんですよ。今、切り分けますね」
マイムが慣れた手つきでケーキを4等分して、皿に乗せる。プレートの乗ったケーキが自分のものらしい。
「では、頂きましょう」
「うむ」
「はい」
「いただきまーす!」
ケーキを口に頬張る。甘すぎないクリームが、ちょうど良い。スポンジはふわふわと柔らかい。苺は少し酸っぱくて、それがまた良かった。
「美味いな」
「美味しいですねえ。教官殿、またお菓子作りの腕が上がったのでは」
「そんな! いっぱい手伝って貰っちゃったし、おふたりのお陰です」
「私は何もしてませんよ。最初に計量しただけです」
アポロがそう答えた時、台所から家電のアラーム音が鳴った。
~ 5/11 ~