「おお、揃っているな。教官殿、俺にも頼む」
「閣下!」
扉を背にして、閣下がニッと笑っていた。わたしたち3人とも、顔がパッと明るくなる。
カップを1つ増やした。ポットに茶葉とお湯を入れて蒸らす。
「閣下、いくつかご報告申し上げたい事が」
「閣下、私もご確認頂きたい事項が」
2人がほぼ同時に閣下に駆け寄る。
アポロさんがマイムさんをキッと睨んだ。
「私が先です」
「はいはい、分かりましたよ」
マイムさんはやれやれ、と言った顔をした。
茶ガラを濾しながら、カップに紅茶を注ぐ。海外の美味しいお茶が手に入りやすくなったって、マイムさんが喜んでた。この紅茶も、いい香り!
「はい、皆さんどうぞ」
紅茶を皆さんの前に置く。最後に空いてる席に座って、わたしも紅茶にお砂糖を入れて飲んだ。
「美味い」
ひと口飲んで、閣下が笑ってくれた! 嬉しいな。上手に淹れられたかな。
「報告は順番に聞く。今日も長引きそうだな。教官殿は、先に帰っていてくれないか」
「いえ、今日はわたし、マイムさんにお願いしたい事があって来たんです」
「まあ、私に? なんでしょう」
「今月の最後の日曜日、閣下を——サカキ様を、わたしに下さい」
「何だと?」
閣下は変な顔をしてる。アポロさんはギロリと睨んでくる。マイムさんは少し考えて、何かに気づいたようにフフと笑った。
「いいでしょう。日曜日ですし、閣下もたまにはお休みになられた方が良いですよ。スケジュール、空けておきます」
「あっ」
アポロさんも、何かに気づいたように声を上げる。
「そういう事でしたか……なら仕方ありませんね。単なる子供のワガママなら通しませんが、今回は、まあいいでしょう」
「お前ら、何の話をしているんだ」
閣下はまだわからないみたい。自分の事なのにね。きっと、自分を振り返る余裕なんてないくらい忙しいんだ。いい休日にしてあげよう。
「マイムさん、ありがとうございます!では、失礼します」
何の事か分かってない閣下の顔を見ながら、扉の外に出た。
……そう、その日は特別な日。
12月26日は、閣下の誕生日!
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