進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     

「くっ……次はコイツだ!ナッシー!」
 ボールから次の相手が飛び出る。以前戦った時には、タマタマだった。進化したのだろう。タマタマからナッシーへの進化は身体が大きく変わる。それゆえ、わざが読めない。
「ニドクイン、かみくだく!」
「ナッシー、サイコキネシス!」
 素早さは同格だ。少しだけニドクインが早かった。だが、ニドクインには先ほどのかえんほうしゃのダメージが残っている。辛そうだ。
「ナッシー、ギガドレイン」
「ニドクイン、みだれひっかき!」
 今度はナッシーが先に動いた。ギガドレイン。相手の体力を自分のものにする草タイプのわざだ。ニドクインは耐えられず、よろりと倒れてしまった。
「ニドクイン 戦闘不能」
「まさかここまで、追い込まれるとはな」
「居るんだろ? とっておきの1体が」
 グリーンはニヤリと笑った。
「まあな。やる気も満々だ。おい、行くぞ」
 呼ぶと、ミュウツーは瞬間移動で自分の前に来る。
「見ていたぞ。なかなかどうして、追い込まれているじゃないか」
「そうだ。ここから挽回するぞ。頼めるか?」
「任せておけ」
 ミュウツーとの会話を、グリーンは楽しそうに見ていた。
「すっげー! そのポケモン喋るんだ! 頭も良さそうだ。カッケェ……」
「フッ。お前がグリーンか。全てのポケモンの頂点に立つのが私だ。易々と、負けるつもりはない」
「おう。かかって来い!ナッシー、ギガドレイン!」
「シャドーボールだ」
 ミュウツーの動きは早かった。自分の指示よりも、早かった。聞いてないのだろう。少し、笑ってしまった。言うことを聞かないポケモンが切り札とはな。
 ナッシーは顔にシャドーボールを受けて、仰向けに倒れる。
「ナッシー 戦闘不能」
「ナッシー! 大丈夫か、よくやった」
 グリーンがナッシーに駆け寄る。ボールに戻す。奴の切り札は、分かっている。カメックス。最後に負けた時は、倒すことができなかった。あの頃よりレベルは上がっているだろう。勝てるのか。ふいに、寒さを感じた。負けそうな時はいつもそうだ。自分の悪い癖だ。拳を握りしめた。弱気になっている場合ではない。
「行け、カメックス! ロケットずつき!」
 ボールからカメックスが勢いよく飛び出してきた。頭を甲羅の中に引っ込め、機をうかがっている。ミュウツーはサイコキネシスを放った。……あまり効果がない。防御はかなり高そうだ。ミュウツーがもう一度、と構えた瞬間、甲羅が回りながら飛んできた。甲羅から頭が出てきて、ミュウツーの胴に勢いよく当たった。ミュウツーはフィールドの隅へ吹っ飛ぶ。
「ぐっ……!!」


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