進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     

「ダグトリオ! きりさく!」
「ウインディ! しんそく!」
 ダグトリオも素早く反応したが、ウインディの方が早い。防御の薄いダグトリオを一撃で仕留める。ダグトリオの素早さを活かして一撃加えたかったが、しんそくの前では無理な作戦だった。
「ダグトリオ 戦闘不能」
 これで、3対3になった。ほぼ互角の勝負だ。大事な戦いだが、どこかに楽しんでいる自分がいる。きっとそれは、グリーンも同じだろう。ウインディを撫でながら、笑っている。
「行け、ニドキング」
 ボールからニドキングが飛び出る。咆哮! 気合いは十分だ。
「ウインディ、かえんほうしゃ!」
「ニドキング、じしん!」
 ウインディの能力は高い。覚える技も多彩だ。おまけに、目の前のそいつはレベルも高い。ニドキングで、どこまでやれるか。手持ちの中では最も付き合いが長く、レベルもかなり上げているが、易々と勝たせてはくれなさそうだ。
 わざを食らったニドキングが、苦しそうに右腕を押さえている。……やけどだ。
「ウインディ、しんそく!」
 決めに来たか。だが、まだまだやらせはしない。
「ニドキング、伏せろ! 背中で受けろ! ちきゅうなげ!」
 トゲだらけの背中で攻撃を受ける。重い一撃だ。うつ伏せの状態から、背中にいる相手の身体をしっかりと掴む。立ち上がると同時に、投げ飛ばした。フィールドに叩きつける。
 ウインディはひょこん、となんでもないように立ち上がった。まだまだ、やれるのか。……いいや、自分の脚を見てキョロキョロとしている。毒だ。毒が当たった。ニドキングのどくのトゲを踏んづけたのだろう。状態異常のお返しだ。
「くそっ、ついてない……! ウインディ、もう一度しんそくだ!」
「ニドキング、耐えろ! じしんだ!」
 高速で迫ってくる、重たい一撃。ニドキングは耐えられなかった。仰向けに倒れて、起き上がれない。
「ニドキング 戦闘不能」
「ぐっ……」
 ニドキングは、頼りになるポケモンだった。もう少し、戦えると思っていた。ニドキングが決して弱いわけではない。それだけ、相手が強いということだ。だが、相手もかなりのダメージを負っているはずだ。
「行って、くれるか」
 ボールの中に問いかける。ニドクイン。2体はつがいではない。だが、片割れの敗北に思うところはあるようだ。ボールをガタガタと揺らしてやる気を示す。
「よし、行ってこい」
 ボールを放る。ニドクインが吠える。ニドキングの仇討ちに、燃えている。
「ウインディ! かえんほうしゃだ!」
「ニドクイン! みだれひっかき!」
 ウインディのかえんほうしゃを正面から喰らわないよう避けながら、接近戦に持ち込む。狙いは毒を喰らった脚。空振りのないよう、当てる。何も言わなくても、狙いがきちんと分かっている。ニドクインは、そういう細やかさを持っていた。
 ウインディは苦しそうに、ばたりと横向きに倒れた。
「ウインディ 戦闘不能」


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