進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     

「くっ……! 戻れ、ピジョット! 行け、フーディン!」
 グリーンのフーディンの事はよく覚えていた。よく鍛えてある。以前戦った時はニドキングとニドクインが、あっさりやられてしまった。
「フーディン、サイコキネシス!」
「サイホーン、ストーンエッジだ!」
 フーディンが先に仕掛けてきた。動きが早い上に、サイコキネシスの威力が高い。
 サイホーンはまともに食らってしまい、地面に沈んだ。
「サイホーン 戦闘不能」
 ボールに戻す。素早いやつなら、手持ちにいない事は無い。素早さ勝負に持ち込むか。乗ってやろう。
「ダグトリオ! じしんだ!」
「フーディン! もう一度サイコキネシス!」
 ダグトリオの方が、早かった。フーディンが動くより早く、地面を揺らす。あちらの苦手な物理攻撃だ。耐えてくるか、どうか。
 フーディンは立ち上がったが、サイコキネシスを撃とうとした時、前に向かってぐらりと倒れた。
「フーディン 戦闘不能」
「やるな……!! 次はこいつだ!」
 グリーンはボールを放る。中から出てきたのは——サイドン!
「ほう……! 立派なサイドンだ。良いだろう。戻れ、ダグトリオ」
 ダグトリオをボールに戻す。面白い。面白くなって来た。
「行け、サイドン」
 もう少ししてから出す予定だったが、前倒しだ。身体の大きさはほぼ互角。レベルも同じくらいだろう。自分のサイドンは、ツノに大きな傷跡がある。
「サイドン! じしんだ!」
「こちらも、じしんだ」
 2体がわざを出し合う。互いに得意としながらも、弱点になるわざだ。互いに大きなダメージになった。サイドンは苦しそうだが、それ以上に目の前の相手と戦いたいらしい。そんな様子だ。
「サイドン、がんせきふうじ!」
「サイドン、いわなだれだ」
 じめん技の撃ち合いの次はいわ技の撃ち合いだ。こちらの方が素早さは遅い。わざを思い切り食らってしまったが、まだ戦えるか。いわなだれを放った。あちらにもダメージは通っているはずだ。苦しそうな顔をしている。
「これで終わりだ、とっしん!」
「応えてやれ、こちらもとっしんだ」
 2体が走り、真正面からぶつかった。硬い身体同士が、岩の削れる音を立てながら頭で、大きなツノでぶつかり合う。そして力尽き、倒れた……2体とも。ほぼ同時だった。
「サイドン 戦闘不能」
「サイドン 戦闘不能」
「……やっぱり、強い。最強のジムリーダーの名は伊達じゃないって事か」
「君も、だいぶ腕を上げたな。以前戦った時より明らかに、強い」
 お互いに、にやりと笑った。サイドンをボールに戻す。


~ 39/45 ~