今度こそ最後の、扉が開いた。
シンプルなバトルのフィールドだ。中央に人影がひとつ。茶髪の青年だ。女と同じ頃の年齢だろう。
「……どうも、お久しぶりです」
「ああ。久しいな、グリーン」
記憶に新しい名前だった。ジムに何度か挑戦に来た青年だった。何度目かで、こちらが負けた。
「まさかアンタがロケット団だとは思ってなかった。ショックだ」
「それは済まない事をしたな。だが、これが現実だ」
「ああ。もう立ち直ったさ。分かってる。アンタのポケモンが強い事も。何度も負けたからな。……でも、オレも今はチャンピオンだ。何度もパーティを見直して、レベルもかなり上げた。もう、アンタに負けていた頃のオレじゃない」
「そうか。それは楽しみだな。私も今日は、とっておきの相棒がいる。負ける気はしない」
「さっさと始めようぜ。ピジョット!」
「行け、サイホーン」
互いの1体目が場に出る。相性は、悪くない。
「フェザーダンス!」
「怯むな、ストーンエッジ!」
ピジョットが舞う。舞い散った羽根がサイホーンに纏わりついて、攻撃力を奪う。
サイホーンはストーンエッジを放った。命中はしたが、攻撃力を下げられている分、ダメージは小さなものになってしまった。
「ピジョット、すなかけ!」
「もう一度、ストーンエッジだ! 耳に頼れ! 羽ばたく音をよく聞け!」
サイホーンは戸惑いながらも、なんとかストーンエッジを当てた。だが、また小さなダメージだ。このまま、長期戦に持ち込まれると分が悪い。
「ピジョット、つばめがえし!」
攻めに転じてきた。ぶつかって来る。サイホーンの身体に爪痕がつく。サイホーンは苦しそうにグァァと鳴いた。サイホーンの防御力でもこのダメージだ。並のポケモンでは耐えられないだろう。ピジョットのレベルの高さがうかがえる。
「サイホーン、大丈夫か」
思わず、声をかける。サイホーンは少し唸ったが、ガウッと元気そうに返事をした。
「いいか、攻撃が来た瞬間だ。頭を向けろ。あとは、分かるな」
再び、ガウッと返事が来る。指示を分かってくれたようだ。
「ピジョット、もう一度つばめがえしだ!」
「来るぞ! 構えろ!」
真正面から飛んでくるピジョットに、サイホーンは飛びかかった。ピジョットのふかふかの身体に、サイホーンのツノがグサリと刺さる。
「サイホーン、つのドリルだ!」
「!!」
サイホーンは逃げようともがくピジョットを逃さなかった。刺したツノを回転させる。
ピジョットは苦しそうにバタバタと羽ばたき、そして倒れた。
「ピジョット 戦闘不能」
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