進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     

 
 扉を開けると、最初のフィールドは、氷でいっぱい。赤髪の眼鏡の女がこちらに向かって立っています。
「ポケモンリーグへようこそ。ロケット団のみなさん。私は四天王のカンナ。氷タイプを使うわ。私の相手は誰かしら? 誰でも構わないわよ」
「ふむ。そうだな……」
 サカキ様は腕を組んで、しばらく悩んでおられです。他の者も、沈黙しています。
「では、私が行きましょう」
 手を挙げました。決して勝算が無いわけではありません。
「マイムか。いいだろう。最初の試合だ。盛り上げてくれ」
「はい!」
 私に託すと、サカキ様と皆さんは、先の扉へ向かいます。
 大きな歓声が聞こえてきます。このフィールドは大きなスタジアムの中にあって、多くの観客が入っています。また、多くのカメラが中継しているのでしょう。
 呼びかけたのは今朝だと言うのに、暇な人達です。サカキ様も仰っておりましたが、こんな時でも、この国の人達は熱いポケモンバトルをただただ欲し求める。そんなに欲しいならば、真っ向から応えてあげるのが筋でしょう!
「ブーバー!」
 少し古い型のモンスターボールから、ポケモンを出します。
 「あら? 草タイプ使いの幹部が居ると聞いたけど、あんたじゃなかったかしら」
 カンナが首を傾げる。
「いえ、きっと私の事だと思います」
「やっぱり。緑の髪に緑の目、緑のリップ。森に棲む草タイプのイメージだわ」
「……いいえ、これは大地の緑です。尊敬している方が好む色使いでして」
「そう。……好きなのね、その人の事。分かるわ」
「ふふ。叶わぬ想いですが、気にしていません」
「訂正するわ。そのブーバー、あんたにぴったり。情熱的だわ」
「ありがとうございます。嬉しいです。
 さあ、行きますよ。ブーバー、にほんばれ!」
 ブーバーが天を指刺すと、雲が晴れ陽の光が強くなった。観客がどよめく。
 
 
 
 観客の声が耳に響く。慣れない雰囲気だ。
大多数が四天王への歓声だろうが、それでも別に構わない。自分は認められている。ロケット団に。サカキに。それで十分だ。
 岩石で出来たフィールドだった。高いところに座っていた男が喋った。
「俺は四天王のシバという。お前たち3人が相手か。さて、誰が来るんだ」
 シバが喋る。その、言葉尻が気になった。
「3人。3人と言ったな。私の事は、使役するただのポケモンだとでも思っているな?
「おお、喋るのか。そのポケモンは。ロケット団の改造でも受けたか」
「私は、改造などなくとも話す。気に食わない奴だ。サカキ、こいつは私にやらせろ」
 サカキは、はははと楽しそうに笑った。
「案外挑発に弱いな、お前は。それとも、怒りの感情が強いのか」
「そうかもしれない。帰ったら脳波のデータでも取るといい」
「いいだろう。勝ってこい」
「任せろ。行くぞ、シバ」
 構えると、シバも立ち上がった。サカキ達は、先の扉に向かった。
「ふむ。1匹でかかって来るつもりか。その意気や良し! 手加減はせんぞ! ウー! ハーッ!」
 シバはボールからイワークをくり出して来た。サカキの手持ちにもいるポケモンだ。何度も戦った事がある。図体のでかさに怯える必要はない。勝つイメージは出来ている!


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