「少し、早く着きすぎましたかね」
ブルルンと、鼻を鳴らして抗議します。サカキ様の指定した時間は昼。まだ、朝ですよ!
「まあ、いいでしょう。何か食べて時間を潰しましょう」
朝ごはん! そうと聞いては黙っていられません。細胞を作り替えて、ケンタロスから人型に戻ります。
「いいですねえ、朝ごはん。何にしましょうか?」
「おまえは、元に戻るのですね……そのままその辺の草でも食べていれば安くあがるというのに」
「料理は人間の素晴らしい文化です。食べなきゃ損損、ですよ」
「そうですか。勝手にしなさい。ここのフードコートでいいですね?」
「はい!」
セキエイの入り口にはフードコートがあります。売店で、ポップコーンやチュロスも売っています。全て、この先にある四天王と挑戦者との戦いを観戦するために。今日は特別に、帽子とTシャツにロゴの入ったロケット団なりきりセットなるものが売っていますね。これ、売り上げはどこに入るんでしょうか。
チケット売り場には多くの人が詰めかけていました。これだけ多くの人が、今日の試合を見るのですね。気合を入れなくては!
「すみません、チョコクロワッサンをひとつ。あと、この一番人気のキッシュも。あとはホットコーヒーをお願いします」
「かしこまりました」
店員さんは私の胸にあるRのマークを見て、少し驚いたような、期待するような顔をしながら、用意をしてくれました。
ふふふ。あとで試合が見られるといいですね。
アポロさんはもう席について、新聞を読んでいました。大きめのハンバーガーに、クロワッサン、ポテトに、ホットコーヒー。細い見た目の割に結構食べますね。朝食が栄養の吸収に最も優れている、なんて言いそうです。
「どうです、何か面白い記事は?」
「特に無いですね。我々の行動が順番に乗っているだけです。後はこの国の要人が国外に逃げるとか、逃げないとか。この記事は殆んど憶測ですね。私としては、逃げない程度のプライドは持っていて欲しいものです」
ハンバーガーをかじりながらアポロさんが言います。四天王を破ったら、政府要人と交渉ですからね。逃げたら、我々が好き勝手な国にしてしまいますよ?
「あ、この記事、おまえの写真がありますね」
「えー!? どこですか!?」
「クチバを破った時のようです。随分と悪そうな顔をしていますね」
「そんなー。ちょっと写りが悪いですよう。笑顔を絶やさず行っているつもりなのに、ショックです」
「ああ、そういえばサカキ様がお出しになった声明が、テレビで繰り返し流れてるらしいですよ」
「まあ! それは見逃せないですね」
「小さい画面ですが、あそこで映っているようです」
小さなテレビを、アポロさんが指差す。
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