進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     


 
 
——4日目——
 
 侵攻は順調だった。一番近いタマムシから始まって、昨日はグレンが陥ちたと聞いた。これでジムのある町は全て我々ロケット団の支配下だ。あとは、小さな町を潰していけばいい。
 もちろん各地で抵抗はあった。でも、俺たち下っぱだってやる時はやる。少なくとも、俺は負けなかった。何体かは倒して、捕らえてある。この日のために、厳しい戦闘訓練を積んだんだ。小さくて、年も若いけど、鬼のように強い教官。教え方も厳しかった。ボスの愛人だという事はみんな知っていて、最初はご寵愛で教官の座についた……なんて笑っていられたけど、すぐにそんな冗談を言う奴は居なくなった。とにかく強いんだ。並のトレーナーじゃ歯が立たないし、ボスだって最初は勝てなかったと聞く。俺は心の中で小鬼、と呼んでいた。
 そんな小鬼とボスと、俺を含めた何人かの下っぱは朝からテレビ局に来ていた。国民に対する声明を生放送で出して、それを繰り返し流すらしい。
 作戦が始まってから、俺は前線の方に配置されていたから、ボスと小鬼と一緒にいる機会は多かった。ボスはいつも通りどこか余裕のある振る舞いだけど、作戦が進むにつれて、小鬼の顔はどんどん険しくなった。年頃の女なんだから、笑えば可愛いと思うのだが、今はそんな気など無いのだろう。殺気を常に発していると言ってもいい。恐ろしさすら感じる。
 放送の準備は目の前で着々と進んでいた。俺も物を運んだり、テープを貼ったり、細かい事務仕事を手伝った。そして……9:00。生放送の始まりだ。
「緊張しているか?」
「いえ、全く」
「流石だな、君は。それでいい」
 本番前にボスと司会者の男が喋っていた。よくテレビで見る、女に人気のありそうなタレントだ。ボスが以前テレビに出た時の縁で隣に座っているらしい。運が良いのか、悪いのか、分からんな。悪の組織のボスと並ばせられるんだから、きっと悪いんだろう。
 俺は他の下っぱ達5人くらいと一緒に、2人が座るテーブルの後ろに並んで立った。
「……ポッポチャンネルをご覧の皆様。おはようございます。チカゲです。本日は皆様に大切なお知らせがあり、この場を頂いております。どうか最後までご覧頂ければと思います。
 ……お隣にお座りの方は、ロケット団のリーダー、サカキさんです」
「おい! お前! サカキ"様"だろう! 訂正しろ!」
 隣にいた下っぱが声を荒げる。ボスへの忠誠心の強いやつだった。
「ひいっ……」
 チカゲ後ろを向いてがびくりと反応する。怖がっている顔だ。まあ、そうだろうな。
「良い。続けろ。お前達は口を挟むな」
 ボスが命じる。
「はっ……」
「つ、続けます。お隣にお座りの方は、ロケット団のリーダー、サカキさんです。今日は2人で、国民の皆様への大切なお知らせを、一緒にお伝えさせて頂きます……」


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