進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     


 
 
 
 チカゲさんの家は、ヤマブキシティだった。マンションに、わらわらとロケット団員の人を連れて行ったら、コンシェルジュの人が怯えながら鍵を開けてくれた。いいのかな、こんなセキュリティで……。
 話し合いが終わったら、少し時間ができたからということで、一旦解散になった。ボスが話しかけてくれて、お昼を食べに行くことになった。こんなにボスの近くにいるのに、全然ふたりきりになれなかったから、嬉しい。
「どうした、俺の顔をじっと見て」
「いえ。一緒に居れるのが、嬉しいなあって」
「そうか。……俺も同じ事を考えていたとしたら、どうする?」
「えっ……、それは……、とっても嬉しいです」
 しどろもどろになって、なんとか答える。ボスは、たまにこういうドキッとする事を聞いてくる。
「そうか。俺も嬉しいんだ」
 そう言うとボスは、わたしの手を握ってきた。
「……同じ事を考えてた、でいいんですか?」
「ああ。せっかくずっと一緒にいるのに、ふたりでは居られない。それがもどかしくてな」
「全く同じ事を思ってました」
 少し手を握り返す。そのまま、歩き続けた。
「フッ。どうだ、側で同じものを見る感想は。怖いか?」
「いえ。周りの人が怖がるから、なんだか変な感じだったんだけど、もう慣れました」
「だいぶ、染まったな。ロケット団に」
「そうかも。ボスは慣れっこなんですか?」
「ロケット団として街を歩いた事はほとんど無いからな。最初はおお、こんなものかと思ったよ。その後は、ボスだからな。堂々としていなければならん」
「明日はまたテレビに出るんですよね。緊張しないですか?」
 ボスの顔が少し暗くなる。
「……忘れようとしていたのだがな。そうだな。緊張するよ。今まで以上に落ち着いて振る舞わねばならないからな」
「頑張って」
「ああ。頑張るとも。キミの応援はいいな、心強く感じる」
「そうかな。応援しか出来ないけど、それならよかった」
 ボスはわたしの頭をぽんぽんと撫でる。子供扱いされてるみたいで、こうされるのは好きじゃなかったんだけど、今は好きだ。髪の毛に、ボスの大きな手を感じる。
 本当はもっと色んな事がしたい。ボスの役に立ちたい。でも、ボスの命令は護衛と、一緒の景色を見る事だ。それに背くわけにはいかない。いつか役に立つ時が来るんだ。そうしたら、思いっきり暴れてやる!


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