「またくさむすび……!? 姑息な真似を!キングドラ、立つのよ!」
「ウツボット、ギガドレイン。あと1発くらいでしょうかね?」
相手は動けません。ギガドレインは問題なく命中します。やがて、えんまくが晴れます。……そこには、ウツボットから地面を伝って伸びた根に絡まり、うつ伏せの体勢でもがき苦しむキングドラがいました。
「そんな……!!」
「いやあ、狭いフィールドで助かりました。密かに根っこを伸ばし続けて居たのです。えんまくが裏目に出ましたね」
「ッ……!!」
イブキが悔しそうに唇を噛んでいます。さあ、勝利までもう一手!
「最後です。ギガドレイン」
ウツボットがキングドラにわざを放つと、起き上がろうとしていたキングドラは再びぐったりと倒れ、ウツボットの根に身体を委ねます。
「そんな……キングドラ……」
「勝負、ありましたね」
にっこりと笑いましたが、イブキは下を向いたまま。アポロさんをはじめ、周りの幹部の皆さんも呆気に取られた様子で、せっかく勝ったのに周りは静かなものです。なんだか寂しいですねえ。
ウツボットをボールに戻します。心なしか、戦う前より肌がツヤツヤ。ドレインのお陰ですね。草タイプのこういうところが、大好きです。
「……負けたわ。完全に負けた……。町を守れなかった……」
キングドラがボールに戻りました。イブキの肩が震えています。
「安心して下さい。私たちは、抵抗さえしなければなんの徴収も行いません。町を団員が歩くのを、少し我慢頂くだけです」
「……わかったわ」
「さて皆さん、帰りましょうか。カントーは順調ですよ。ミュウツーが頑張ってくれています」
アポロさん達ににっこりと笑いますが、やはり笑みは返ってきませんね。やれやれ。
5人で、ジムの外に出ました。見ていた団員達が歓声を上げるのを、手を振って返します。
アポロさんが、口を開きます。
「それで、おまえはいくつジムを潰したのです」
「3つですね。ニビ、ハナダ、クチバ」
「……フスベも含めなさい。おまえ無しでは、私たちは勝てなかった」
「あら。認めて下さるんですね。ありがとうございます。そちらは?」
「……チョウジ、エンジュ、アサギ、タンバ。4つです」
「まあ、この短期間で素晴らしい。ではこの勝負、引き分けですか?」
「フン。そういう事になります」
「残念だったな、アポロ」
「きっとまた、機会がありますよ」
ラムダさんとランスさんが慰めます。アテナさんはにっこりと微笑んでいます。この4人、お互いを信じ合っていて、とても仲が良さそうです。
「では、まずは報告をしなければ。……サカキ様? 聞こえますか? 無事に終わりましたよ」
通信機のボタンを押す。サカキ様に、勝利の報告が出来る。なんて幸せな事でしょう。手が、声が震えそうです。
「ああ、その調子では、上手くいったようだな」
「はい! 頑張りました!」
「うむ。良くやった。ジョウトの奴らとも仲良くやれているようで何よりだ」
仲良く、と聞いてアポロさんが、引き攣った笑いを浮かべています。
「我々もセキチクの制圧が終わったところだ。忍者どもにかなりの抵抗を受けたが、なんとかな。グレンも、明日には陥ちる」
「まあ。では次は四天王ですね」
「ああ。だが流石に4人相手にするとなると、人手が足りなくてな。お前と、アポロ。セキエイ高原まで来てくれ」
「!!」
「構わないな? アポロ」
「はいっ! このアポロ、サカキ様のためならば何処へなりともお供致します」
アポロさんが通信機を横から奪い取って話し出しました。なんて幸福そうな顔。良かったですね。こちらまで嬉しくなります。
「頼もしい事だ。明日は野暮用をこなすから明後日になる。ふたり一緒に、セキエイ高原で会おう。マイム、セキエイに行ったことはあるか?」
「残念ながら……」
「そうか。ではテレポートは使えないな」
「いえ、でもここからだと、近いですし。徒歩で問題ないかと」
「分かった。では昼でいいな? 私は午前は予定がある」
「はい、了解です。アポロさんも、問題ないかと」
「うむ。では、よろしく頼む」
通信はそこで切れました。
~ 18/45 ~