進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     

「さて。多勢に無勢、というのもあまり好ましくありませんし、宜しければ1対1で勝負致しませんか?」
「あら、それでいいの? ロケット団なんだから、卑怯にゾロゾロ集団でやって来るものだと思ってたわ」
 イブキが首を傾げる。
「ふふふ。相手を屈服させての勝利こそ、我らロケット団に相応しいのですよ。さあ、始めましょう。とっておきの1体が居るのでしょう?」
「ええ、そうよ。行きなさい、キングドラ!」
 イブキがボールを放る。キングドラが場に出る。確かに、最後の1体に相応しい佇まい。威厳すら感じます。レベルはかなり高いでしょう。
「では。行きますよ、ウツボット」
 私も信用しているポケモンで行きます。ボールを放って、ウツボットが出てきます。失礼な事に、イブキが笑い出しました。
「ハハッ。そんなポケモンで大丈夫かしら? 楽しませてくれるのよね?」
「ええ、ええ。約束しましょう。そちらからどうぞ」
 全く、バトルとなると草タイプはどうも舐められがちですね。いつも頼りにしているのに……。
「溶岩に落っことしてあげるわ。キングドラ、りゅうのはどう!」
「それは困りますねえ。ウツボット、ねをはる」
 キングドラの攻撃を受けつつも、ウツボットは地面に根を張ります。体力が少しずつ回復できるお気に入りのわざです。
「フフフ、回復のつもりでしょうけど、これでその場から動けなくなったわね! 一気に行くわよ! 
 キングドラ、はかいこうせん!」
「はい、ではくさむすび」
 地面から小さな草が生えて、キングドラの尻尾に巻きつきます。キングドラはバランスを崩して、はかいこうせんをあらぬ方向へ撃ってしまいました。
「キングドラ!!」
「焦らず、いきましょうよ。ギガドレイン」
 ウツボットがキングドラの体力を吸い取ります。先程のねをはると合わせると、最初に受けたダメージはほぼ回復できました。
「くっ……」
「おや、はかいこうせんの反動で動けないのですね。では、もう一度ギガドレイン」
 ウツボットがまたギガドレインで体力を吸い取ります。キングドラの体力は、残り半分ほどでしょうか。
「キングドラ! くさむすびに気をつけて!りゅうのはどう!」
 イブキは少し戸惑っているようです。舐めてかかっていた草タイプに追い込まれる気分はいかがでしょうか?
「はい、ではもう一度ギガドレインです」
「くっ……さっきからそればっかり……! キングドラ、えんまく!」
 キングドラがえんまくを張ります。少し、意外でした。攻撃技だけで固めてくるタイプに見えたので。でも、こちらにも仕込みがあるので問題ないです。
「ウツボット、音で判断なさい。ようく、狙って」
「キングドラ、りゅうのはどう……ッ!?」
 えんまくの中のキングドラは、突然倒れました。そこから、動きません。動けないのです。


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