進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     

「失礼。カントーから加勢に来た者です。中はどうなっているのですか?」
「おお! それは心強いです! 幹部の皆さんが奮闘なさっているのですが、相手も強く……」
「ふむ。通しなさい。私が、なんとかしてみせましょう」
「ははっ。おい、お前らどくんだ! カントーからの増援だ!」
 団員達が道を開ける。ジムに入る。もちろん本物ではないけど、溶岩に浮かぶ岩場をイメージした作りになっていて、なんだか暑い。
「あっ、あなた……カントーの……」
 赤い髪が美しい、女幹部のアテナさんがこちらに気づきました。
「マイムです、アテナさん。どうです、戦況は?」
「あんまり、良くないわね……あたくし達3人はすぐ負けてしまったわ。今はアポロが戦ってる」
 イブキの前にいるのは……アポロさん。でも、顔は苦しそうです。
「私が、お手伝い致しましょう。大丈夫、負けませんから」
 ニコリと笑ったのですが、眉を顰められます。戦闘の事となると、あまり信用が無さそうですね、私……。
「気をつけて。かなり強いですよ」
「ああ。用心するんだな」
 ランスさんと、ラムダさんが声をかけてくれます。優しいお2人です。手を振って、アポロさんの元へ向かいました。
「ヘルガー、かみくだく!」
「ハクリュー、りゅうのはどう!」
 ハクリューに向かっていったヘルガーがわざの直撃を受けます。立ち上がるのは、難しそうです。
「ヘルガー!! そんな……」
「ふっ。最後の1体を出すまでもなかったわね。この町を、あんた達の好きにはさせない!」
 イブキが勝ち誇る。まだ1体、残しているのですね。
 バトルフィールドは、少し狭め。溶岩を模した炎の海が周りを包んでいます。アポロさんはフィールドの手前側に立って、項垂れています。
「アポロさん、アポロさん」
 ショックを受ける彼に、背後から呼びかけます。
「くっ……? 誰かと思えば、おまえですか。こんな時に、何の用です」
「いえ、見たところ勝てなさそうなので、お手伝いをしようかと思いまして」
「はあ……? 喧嘩を売っているのですか」
「うーん。いい加減、仲良くしましょうよ」
「ちょっと、何なの。あんたもロケット団?」
 イブキがこちらを見ています。ハクリューはまだ戦えそうですが、ダメージは負っているように見えます。
「はい。ロケット団幹部、マイムと申します。ここまで4人もの仲間が随分とお世話になりました。最後は、私がお相手いたします」
「勝手な事を言わないで下さい! 私は……まだやれます……」
「アポロさんは、ヘルガーを労ってあげて下さい。後は私がやります」
 少し、真剣な顔をしました。戦況は、ほぼ負け。認めたくない気持ちはわかります。ですが、主人のためになんとか立とうとしている、ボロボロのヘルガーが可哀想なのです。
「……分かりました。頼みましたよ」
 アポロさんがヘルガーをボールに戻します。


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