進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     


 
 
 
「……ですので、逆らわなければ特にポケモンの徴収を行う事はありません。私たちのボスは、寛大なお方なのです」
「……わかったネー。誰かに聞かれたら、そう答えておくヨ。ユーの強さで幹部クラス、まだ上がいるのは恐ろしいネ。ロケット団はソー ストロングなチーム……」
「うふふ。はい、分かっていただけて嬉しいです! では、失礼しますね」
 クチバジムを出る。ハナダに引き続き快勝です。草タイプ達がみんな頑張ってくれました。この先にあるジムは、ミュウツーが頑張ってくれているはずですから、私はいったんフリーになります。勝利の報告もかねて、指示を仰ごうかと通信機のボタンを押しました。
「サカキ様、こちらマイムです。ニビ、ハナダに引き続き、クチバジムを制圧致しました」
「うむ、早いな。流石といったところか」
「お褒め頂き、ありがとうございます。身に余る光栄でございます」
「ひとつ、頼みがある。お前にしか頼めない事だ」
「まあ。何でございましょう」
 ごくり、と生唾を飲み込む。嬉しい。私を、この私を頼って下さっている。またお役に立てる!
「ジョウトからの連絡が、急に途絶えた。幹部のどいつもジムを制圧する度に報告が来ていたのだが、最後の1つに苦戦していると見える。加勢に行ってくれないか。お前が一番早いだろう」
「あら、そうでしたか……。それは大変ですね。分かりました、直ちに向かいます」
「ああ。頼む」
 通信はそこで切れた。動悸が収まらない。サカキ様が、私を頼って下さった!それだけで舞い上がりそう。いえ、もう既に舞い上がっている。落ち着かなければ。深呼吸を、ひとつ。仕事をする時は常にクールでいるものです。
「聞いていましたね? 私はジョウトに向かいます。あなた達はポケモンセンターを制圧しなさい。終わったら、次の町へ」
「はっ」
 団員達に指示をする。
 身体の細胞を変化させて、ケーシィに化ける。幸いにも、ジョウトには土地勘があります。テレポートで行けるでしょう。苦戦するジムと言えばあそこのはず。いざ……!!
 目を閉じる。町を強くイメージする。身体が、吹き飛ばされるような感覚。強い風を感じる。正確には、サイコパワーによる空気の流れなのだけれど。しばし身を任せると、強い風が止んだ。空気の匂いが、変わったのを感じる。目を開けた。細胞を変化させて、人型に戻る。
 ここは、……ジョウトのフスベシティ。最強とも言われるドラゴン使い、イブキがジムリーダーをやっている町。
「さて、行きますかね」
 歩みを進める。元々山間にある静かな町なのですが、人っ子ひとり出歩いてない様子でした。我々の侵略も、ぼちぼちニュースになっているのでしょう。そのせいかもしれません。誰に会うこともなく、ジムに着きました。ジムの入り口には、団員達がたくさん。ざわざわと、難しい顔をして何か話しています。


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