進メ、我ラ火ノ玉

鐘屋横丁

     

 
 ミュウツーに、勝てた! それも、ずっと息の合わないと思っていたスイクンで。
 もう、ずっと負けていたからめちゃくちゃ嬉しい事だし、ミュウツーにとっても勉強になったのも嬉しい。
 ボスにも、褒めてもらった。良くやったって、一言。嬉しいな。嬉しい嬉しい。何度も思っちゃう。でも、あまり浮かれている場合じゃない。明日からの作戦をしっかりと成功させなくちゃいけない。
 ……て、思ったんだけどな。
「戦闘はマイムさんと、ミュウツー。むう、わたしはお留守番なの」
 がっかり。せっかく役に立てると思ったんだけどな。
「お前には、私の警護を命ずる。何処からか刺客が来るかもしれない。最も重要な役割だ」
 わたしの頭をぽんぽんと撫でた後、しっかりと目を見てボスはそう言った。……必要とされてるんだ。それが分かった。
「わかりました。必ず、守ります」
「そばに居て、私と同じものを見ていて欲しい。……これは、私の個人的な願いだな」
「はい」
 少し、難しい事を言われた気がする。意味をちゃんと考えよう。大切な事だから。わたしも、意志をきちんと持とう。大事な人のためだから。
 
 
——1日目——

 次の日。まずはアジトから一番近いタマムシジムに行った。ボスと、ミュウツー。団員さんは20人くらい。
「突入だ」
「ははっ」
 ボスの合図で、団員さん達が駆け足で一斉に入り込む。
「我々はロケット団! ポケモンをボールに戻せ! 大人しく投降しろ! 抵抗するならば、容赦はしない!」
「きゃあああああっ!」
 タマムシジムのトレーナーは、女の人ばかりだ。皆、ポケモンをボールに戻して、怖がって震えてる。泣きそうな人もいる。大丈夫だよ、抵抗しなければ何もしないから。
 団員さん達が先行した後を、少し遅れてボスと共に奥へ進む。ちょっと、緊張してきたな。制圧するってこんな感じなんだ。これから、色んな人の怯える姿やこっちを睨む姿を見るんだ。その中から、ボスを狙ってくる人を見逃さないようにしないといけない。しっかりしなきゃ。
 地面にはベトベトン、影にはゲンガーを潜ませてある。何をすべきかは、しっかり伝えた。いざというときに、誰よりも早く反応してくれるはず。
 一番奥のバトル場についた。ここのジムリーダーも女の人だ。エリカさん。少し動揺しているようだけど、しっかり立ってこっちを見ている。
「あらあら、今日はお客様が多いですね」
「ジムリーダー、エリカ。この町は我々が占拠する。大人しく投降しろ!」
 団員さん達がエリカさんを取り囲む。
「……。あら?」
 黙っていたエリカさんが、こっちに気づいた。ボスの姿を見て、口元に手を当てて驚いている。


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