アポロさんは、バトル場にいらっしゃった、サカキ様の事をじっと眺めています。どこか嬉しそう。私には絶対に向けない表情です。きっと、サカキ様と一緒にカントーで一緒にお仕事がしたいんでしょうね。でも、私にも思うところはあります。
「まあ。こんな素敵なお仕事、なかなか他の方には譲りたくありませんね」
「フン。おまえとは、どちらが上か、いずれ白黒はっきりつけてやりたいものです」
アポロさんは、顔をこちらに向ける事なく答えます。ずっとサカキ様の事を目で追いかけているその姿は、まるで恋する乙女のよう!
「ふふふ。では、こうしましょう。この作戦で、より多くのジムリーダーを倒した方が勝利というのは。負けましたら、私は退任をサカキ様に申し出ましょう。作戦のお役に立てないようでは、不甲斐ないですから」
それを聞いたアポロさんは、やっとこっちを向いてくれました。
「ふん。良いでしょう。おまえの手持ちに遅れを取るとは思わないですが。草タイプばかりゾロゾロ連れて。お花畑で遊んでるのがお似合いですね、実験動物には」
「…….。言いますねぇ。私に喧嘩を売った事、後悔しないといいですね」
「後悔が出来る事、楽しみにしていますよ」
「はい、それでは。
……あなた達! 試合は終わったでしょう! いつまでも外を眺めてないで、持ち場に戻りなさい!」
「うーす」
「ミュウツーカッコよかったな……」
「だよな! 世話係羨ましいよな……」
団員達が、バタバタと仕事に戻る。
作戦は、明日決行です。まずはカントーとジョウトで、ジムを押さえて街を無力化する。3日ほどかかる見込みです。それが済んだら、他の地方へも足を伸ばしつつ、本隊はいよいよ国の中枢へ。この辺で四天王との戦いが入るでしょう。この日まで、長かった。多くの準備の日々がありました。
私の任務は、前線でのジムリーダーとの戦闘。責任のある立場ですが、そんなに緊張してはいません。仮に私が負けても、次の幹部がいます。その次も。最後にはサカキ様と、ミュウツーと、教官殿が控えていらっしゃいます。とても安心感のある皆さんです。……まあ、私も負けるつもりはこれっぽっちもないですが。賭けもありますし。
教官殿の厳しい訓練を乗り越え、したっぱ達も随分強くなりました。これだけの戦力を揃える事に、どれだけの時間がかかったでしょうか。
ジョウトも、きっと大丈夫でしょう。やる気に燃えるアポロさんがいる。他にも、実力のある幹部の皆さんが3人います。
アポロさんは少しも動かずに、まだ、窓の外を眺めています。倒れて傷ついたミュウツーを起こし、教官殿と何か話しているサカキ様。その姿をじっと見つめる瞳が、熱く燃えている。きっと、頭の中はサカキ様でいっぱいなのでしょうね。ミュウツーよりも、教 官殿よりも、今すぐ自分を見て欲しいのでしょう? 忠誠——狂信——執着。本当に、恋しているかのよう。
まあ、人のことは、全く言えないのだけれど。
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