鐘屋横丁

     

 再び、腰を動かす。女は目を閉じた。時々甘い吐息が漏れるのが聞こえる。気持ち良さそうな顔だ。もっと満足させてやりたい。が、こちらの限界も近かった。
「ぐっ……出すぞ、いいか」
「はい……!」
 先程より早く腰を打ちつけて、避妊具に精を放った。はあ、はあと息が漏れる。いつもより、早く射精してしまった気がする。女の膣から自身を引き抜いて、避妊具を縛って捨てた。
 女の顔を見たが、嬉しそうだ。口元をへにゃりとさせて微笑んでいる。
「ねえ、これ、取ってもいい」
「ああ……。今、ほどいてやろう」
 手首の拘束を解いた瞬間、女が抱きついてきた。両腕を首に回して、ぎゅうと音が出そうな強さで抱きしめてくる。
「……はー。ずっと、こうしたかったよ」
「悪かったな」
「ううん。そこまで嫌じゃなかったし」
「そうか。しばらく、このままでいるといい」
 女の頭を撫でた。茶色く長い髪はいつも綺麗で、触り心地がいい。
「うん。……でもどうして?」
「次は後ろ手に縛るからだ」
「えっ!」
「楽しみだな。自由を奪いながら抱くと、やはり興奮する」
「ええー……」
「嫌か?」
「嫌じゃない、ですけど」
「なら、いいじゃないか」
 抱きついてる女の身体を少し離す。やや不満そうな女の額に、口付けた。ゆっくりと額から、瞼、頬、そして唇に。
「んん……」
 舌を入れると、女は小さく声を漏らした。先程とは違い、積極的に絡めてくる。その小さな身体で、自分の全てを受け入れてくれるような気がした。愛おしい。胸が、熱くなる。
 そこそこに、唇を離した。女は、次は何をするのと言いたげな顔だ。
「さあ、続きをするぞ。後ろを向け」

 それからは後ろ手に拘束して、座位で抱いた。その次は、前向きに縛って後ろから抱いた。女も良かったのか、2度、3度と果てた。
 女と何度も交じり合っているうちに、心にあった暗い感情は、爽やかな風に吹かれたように消えた。女も、そうだといい。ただの身勝手な願望だが、女はいつもの顔に戻っていたような気がした。
 最後はお互いに手をつよく握りながら、痛い痛いとふざけて、それから、他愛もない話を少しして、どちらからともなくゆっくりと眠りについた。


~ 9/10 ~