鐘屋横丁

     

 女の秘所に触れた。ほのかに湿っているが、いつもとは、明らかに違う。自分の侵入を拒まれているような気がした。だが、構うものか。顔を女の股に埋め、秘所を舐める。
「あっ……! んん……」
 女が声を漏らす。両手を拘束された女は、もどかしそうに身をよじる。それが女に、唯一残された抵抗だ。
 わずかな蜜を舐め取り、陰核を責めた。舐めた後、軽く吸う。ずちゅ、と下品な水音が鳴る。
「……っ!」
 音を立てると、女は恥ずかしそうだ。身体を起こし、右手の指を、女の口に突っ込んだ。
「舐めろ」
「……」
 女は従った。舌を使って指の根元まで、丁寧に舐める。これから何をするのかをしっかり理解しているようだ。小さな舌の柔らかさと温かさを感じる。
「よし」
 女の口から、指を引き抜いた。それはわずかに糸を引いていて、ぬらぬらと光った。
 その指を女の膣内に入れた。思っていたより、すんなりと入った。女の身体がびくんと反応する。
「ん……ふぅ……やっ……」
 女がまた声を漏らす。感じる箇所を、指でじっくりと責めたてる。女はまた、身をよじらせる。少しずつ、湿り気が増してきた。感じているのだろうか。
「知らないだろうな。あいつらは。キミがこんなにもはしたない女だという事を」
「……」
 つい、余計な言葉が出た。女はまた黙ってしまった。どうも今日は、調子が狂う。口から出るのは傷つける言葉ばかりだ。そんなつもりは、少しも無いというのに。
「入れるぞ」
「はい」
 バスローブを脱いだ。避妊具を着けて、自身を女の中に挿し入れた。
「あぁっ……うぅん……はぁっ、はぁ」
 奥まで届くと、女がうめく様な声を上げる。女の膣は狭い。ぎゅう、と締めつけられるだけで絶頂しそうになる。
「どうだ、縛られるのは」
「んっ……悪く、ないけど」
「けど?」
「あなたを、抱きしめられないのが、嫌だ」
「そうか」
 腰を打ちつける。自身がいつもより固いのが分かる。興奮しているのだ。女を拘束して、自分のものにして、時に傷つけながら、好き勝手に犯している。独占欲が、満たされる。
「……ずっと、地下に閉じ込めてしまいたい。地下には、キミを怖がらせる存在はもう無いだろう。そうしてずっと、あの部屋で、そばに」
 違う。しかし、自分の口から出るのは、そんな言葉だ。違う、そんな事を言って、怖がらせたくないはずなのに。
「……やめて……」
「口答えするな」
「……」
 女の目には、うっすらと涙が浮かんでいる。思わず、繋がったまま、動くのを止めた。
「……すまない」
「うん」
 しばし、女と見つめ合う。濡れた瞳がまた美しい、と思ってしまう。
「そんな事をしても、キミはいつものようには笑わない。間違っている」
「そうだよ」
「怖がらせてばかりだ。今日は」
「ううん、……わかるよ」
「分かってくれるか」
「うん」
「いい女だ。キミは」
「嬉しい」
 女はへへっと笑った。先程までの、儚さを感じさせる笑い方ではない。いつもの、女だった。
「キミはやっぱり、その方がいい。また、動くぞ」
「はい」


~ 8/10 ~