女と共に後部座席に座った。車が出る。最後にちらりと男達を見た。完全に気絶している。車もねんりきでひしゃげて大破しているが、まあ、明るくなれば帰れるだろう。どうでもいい事だ。
女は、両手を縛られていた。ロープを切って拘束を解く。
「いたた、跡がついちゃった」
「身体は、大丈夫か。何か、おかしな事をされなかったか」
「少し……。でも、大丈夫です」
女はうつむいた。
「そうか。無理に答えなくてもいい」
「はい。……あの、ありがとうございました。助けてくれて」
「当然の事をしたまでだ。すまない。危ない目に遭わせてしまった」
「いえ、そんな……」
「怖かっただろう」
「……怖かったです」
「もう、大丈夫だ。離さない。泣きたかったら、泣いても構わない」
女の手を握る。
「うん……ごめんなさっ……、少し……少しだけ……」
女はまた涙を流した。手を、つよく握る。自分に出来る事が何も無いのは、なんとも歯痒い事だろうか。
「……行き先は、どうする。今日は、帰るか」
「……いえ、一緒にいたい……です」
涙を拭いながら、女は答える。
「そうか」
いつものホテルの前に、車をつけさせた。
「ご苦労だったな。後は、帰っていい。今日のお前達の働きは、見事なものだった」
「はっ。ありがとうございます」
「尊敬するサカキ様と教官殿のためなら、このくらいは当然です」
「今日は、ありがとうございました。本当に、なんとお礼を言ったらいいか」
「いいんです。明日からまた、ビシバシしごいて下さい!」
「そうですよ! 今日は、ゆっくりお休みになって下さいね!」
団員達が、にいっと笑う。女も、微笑む。
「……ありがとう」
「では、失礼します!」
「おふたりとも、おやすみなさいませー!」
車が発進する。女は、手を振って見送った。
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