その後は、ポケモンセンターに寄って、ベトベトンの様子を見に行った。少しだるそうだったけど、治療は順調だって言われた。良かった! ポケモンセンターの食事で痩せたのかな、ひとまわり小さくなったような気がした。
ポケモンセンターから出ると、外はすっかり暗くなってた。ご飯買って、早く家に帰ろう。
道を歩き出してしばらくしたら、男の人——少しガラ悪そうな人だな——が話しかけてきた。
「お姉ちゃん、この辺の人? ポケモンセンターへの道を教えて欲しいんだけど」
「あ、ここの道をまっすぐ行って、ひとつ目の角を右に曲がれば……」
説明しているうちに、男の人の連れてるクサイハナが頭をこっちに向けてきた。何だろう? 何か技を出したみたい。これは……ねむりごな? あれ? どうして? わたしの、意識が、遠ざかっていく……
報告書の小さな文字を眺めるのに、飽きが来た。灰皿には吸い殻がひとつ、またひとつと増える。やっと、半分を過ぎたところだ。
「少し、休憩だ」
「そう致しましょう」
「外に出て来る。ドリンクでも買うとするか。お前は待ってていいぞ」
「はい、分かりました」
階段を登り、表に出ると、道路には1台の車が停まっていた。
……そこで現場を、この目で見た。
ぐったりとした女が、複数の男達によって車に運び込まれた。すぐに車は発進する。あの姿は間違いなく女だった。ポケモンの能力だろうか、深く眠っているようだった。
まずい! 走ったが、車は遠ざかって行くばかりだ。手持ちで、最もスピードの出る3体を出した。
「ヤミカラス! 車のフロントガラスに張り付け。とにかく邪魔をして減速させろ。
ダグトリオとペルシアンはとにかく追いかけてくれ。可能なら、攻撃を」
アジトに戻った。起きた事を話すと、マイムが目を丸くして驚く。訓練所に残っていた団員を連れて行く事にした。急いで追わなければ。
ダグトリオの掘り進んだ後は地面に残る。それを頼りに、猛スピードで車を走らせた。
しばらく進むと、ダグトリオとペルシアンが疲れた様子で道路の隅に横たわっていた。
「ご苦労。後は、何とかしよう」
2体をボールに戻す。
車の特徴は覚えている。少し旧い型の白いミニバンで、ステッカーがベタベタと貼ってあった。
あとはヤミカラスだったが、まだ奮闘していた。……お陰で、見つけた。特徴通りの車が、フロントガラスに貼り付いて邪魔をするヤミカラスに苦戦しながら走っていた。あまりスピードを出せないでいるようだ。相手は電気ポケモンなどで、振り払う術がないのだろう。
車の窓を開けて、手を振った。ヤミカラスがこちらに気づき、嬉しそうに帰ってくる。
「よし、良くやった」
ボールに戻す。少し遅れて、車の後をついていく。間にいた車の数が減ってきた。小さな山に向かっているようだ。
握った手が汗ばむ。車がやけに遅く感じる。……相手は何人なのか。手慣れているのか。目的はたかが知れている。あの白く、美しい女のからだに、知らない男の指が這い回る様を想像すると、吐き気がする。
山に入った。ここからは、一本道だ。スピードを上げさせた。数メートル進んだところで、奴らが車を停めているのが見つかった。車のライトを明るくするよう命じた。
眩しさに、こちらに気づいた男達が、車から出てくる。……3人か。
こちらも、車を停め降りる。
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