「ありがとう。それくらいで、良い。これ以上舐められると、私も果ててしまいそうだ」
男が、私の口から男根を引き抜く。ベッドの隅に座ると、私の両足を持ち上げるようにして開き、私の尻穴を舐め出した。
「うっ……」
「力を抜け。そうしないと、痛いぞ」
初めての感覚に、声が出る。慣れない部位を責められる恥ずかしさがあったが、わずかに快感もあった。男は慣れた様子だ。先程は他の男の話もしていた。少なくとも自分よりは、経験があるのだろう。
「さて。
そう言えば抱いてばかりで、抱かれた経験が無いな。先程までと違って、こっちは、自分の感じる場所が分からん。悪いな。まあ、なんとかなるだろう。入れるぞ」
「あっ……! んぐ……、かはぁっ」
男は再び私の両足を持ち上げると、一気に私のなかへ入ってきた。強烈な痛みと異物感に、背中にぞくぞくと寒気が走る。
「痛いか。そのうち、良くなる」
男が腰を動かす。知らない感覚が身体を襲ってくる。思わず、目を瞑る。シーツを握りしめる。その手を、上から重ねるように男が握りしめてきた。
「ああ……夢のようだ。自分を抱ける日が来るとは思わなかった。私は君で、君は私だ。サカキ。あぁ……」
男はうっとりとした表情だ。愛おしそうに、顔を覗き込んでくる。
「っ……違う……」
「?」
「お前と、わたしは、違う」
「ほう?」
男は腰の動きを止めた。
「っ……待て、いきなり、止めるのも……」
「また良かろう。フフフ。どこが違うと言うのかな」
男はにやりと笑う。自分の中が、男のモノで満たされているのを感じる。異物感の先には、知らない感覚があった。気持ちいい、のかもしれない。
言葉をやっと、紡ぎだす。
「お前は……私と違って、敗けを知らない……その目……あの少年に……似て……」
「なんだ、そんな事か」
男はつまらないと言いたげな顔をすると、また腰を動かし始めた。
「あ、うっ……!」
「私はたまたま、自分より強いものに巡り会えていないだけだ。その時が来れば、あっさりと負けるだろう」
男が、腰を打ちつけながら、じっとこちらの目を覗き込む。
「少年に負けたから、なんだ。お前は、誇りも捨ててしまったのか」
「……」
「怖いのか?」
思い出す。少年の、真っ直ぐな目。敗北の記憶。ロケット団の解散。どうして、と詰め寄る配下達。修行の旅に出る朝の事。最強じゃなかったのかよ、と言われる。全ては、逃げだったのかもしれない。
「こ、わい……のかも、しれない」
「安心しろ。
この世界には、君を負かした少年は存在しない。仮に居たとしても、また、他の世界に行けばいい」
男は今度は優しく笑った。そして、腰をまた早く動かす。身体を襲う知らない感覚が、少しずつ快感に変わってきた。まだ痛みもあるが、快感がそれを上回る。
「ううっ……」
快感に、ため息に近い吐息が漏れる。男は恍惚とした表情で、甘い言葉を続ける。
「君が安心するまで、何処へでも行こう。
逃げなものか。最後に笑えば、それは勝者だ」
「……サカキ」
「ああ。やっと名前を呼んでくれたな。たったひとりの君を、私は離さない」
男は上体を重ねてきた。口付けが、降ってくる。受け止めた。こちらの舌を絡めとり、愛しんでは離す。繋がったままの口付け。押し寄せる快感の波に、どうにかなりそうだった。
「そろそろ、イキそうだ。イッてもいいか」
「……ああ」
「ふっ……! うっ……!」
男が果てた。精を私のなかで放ち、はあ、はあと荒い息をしながら、また上体を重ねてきた。男の、身体の重さを感じる。
「抜くぞ」
「ううっ……」
尻穴から男の男根が引き抜かれた。一気に引き抜かれると、またぞくぞくと知らない感覚が走る。ほんのりと生暖かいのは男の精液だろう。
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