蠱惑

鐘屋横丁

     

「ほう……」
 完全に裸に剥かれた。男は満足そうに感嘆の声を漏らす。
「少し、固くなっているな。安心した。興奮しているのは、私だけかと思った」
「うっ……」
 男根をかるく握られる。そのまま、手を上下に動かされた。
「ぐっ」
 全身が、びくりと動いてしまう。そんな姿を見て、男は満足気だ。
「いい反応だ。すぐに、良くしてやろう……」
 男は時にゆっくりと、時には早く手を動かし、私の反応を楽しんだ。
 私の身体はもう、すっかり男の虜になっていた。ただでさえ、薬で頭がぼうっとするのに、手の動きに翻弄され、快感に打ち震え、うめき声が出てしまう。
「うぅ……あっ……か、はあっ……」
「可愛いな、君は。自分にこんな感情を抱くとは、思っていなかった。初めての相手なのに、どうすれば悦ばせられるのかが分かるのは、実に面白い」
「……」
「ほら、そろそろ限界が近いんじゃないか?」
「うぐっ……」
 男の指摘は正しかった。もう、果てはすぐそこだった。拘束された手が動く。カチャカチャと、手枷の金属音が鳴る。
「我慢する事はない。イキなさい」
「っ……! ぐう……!!」
 男の言葉に、身体が反応する。まるで男の命令を聞き入れたように——果てた。
「……はあ、はあ、……うぅ……」
「いい子だ」
 男がニヤリと笑う。無性に、情けない気分になる。自分自身に身体を好きにされ、ついには射精してしまった。腹の上に、生温い精液の感覚がある。
「さて、次は私の番だ」
 男は自分の服を脱ぎ出した。……程よく、鍛えられた身体。自分と全く同じ身体が現れる。
「これは、もう要らないだろう。私の趣味ではあるけどね」
 男が、私の手枷を外した。確かに、もう抵抗する気は失せていた。働かない頭でわずかに考えられるのは、これからどうされるのだろうか、という事だけだった。
「こっちの、経験はあるか」
 男が再びベッドに入り、横たわる。私の尻穴を優しく触れながら尋ねてきた。
「無い」
「ふむ。……舐めてくれないか。君も痛い思いをせずに済む」
 男はシーツの上に座り、自分の男根を握ると、口に向けてきた。これから、この男に口も尻も犯されるのだ。再び恐怖が襲ってきたが、今更どうする事も出来ない。恐る恐る、身体を起こして口を開けた。
「いい子だ」
 男が優しく囁く。
 口の中に、男のモノが入ってくる。既に固く、少しそり返っている。吐き出しそうになるのを堪えながら、何とか舐めた。
「ああ……。いいぞ、サカキよ」
 男は私の頭を撫でる。顔を見た。余裕に満ちていた男の表情が、少し歪んでいた。


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