「おい。そんなに、こいつが良いか。善人ヅラして、思いもしない事をベラベラと喋る、こいつが」
モニターを指し、聞いてみた。
団員達は少し黙ったが、1人がすぐに答えた。
「あったりまえじゃないですか。サカキ様の裏の顔を知ってるからこそ、表の顔も素晴らしく思えるんです」
「そうそう。裏の顔が際立って、シビれるんスよ」
「この顔に、言葉に全国の奴らが騙されてると思うと、たまりません」
「それな! ゲラゲラ笑ってやりたいぜ」
団員達は皆、笑っている。悪い顔だ。
「いい顔だ。それでこそ、お前らだ」
缶ビールを開ける。つまみの、スナック菓子を頬張った。
「お前は、どうだ。どう思う?」
女に聞いた。
「そうだね。私は、表の顔も好きかな。優しそうで。出会っていたら、好きになっていたかもしれない」
「ほう」
「でも私が出会ったのは、ボスだから。出会って、バトルして、好きになったのはボスだから」
「そうだな」
「難しいな。どっちのボスも、ボスだから。嫌いじゃないんだけど、私は今のボスの方が好き」
「そうか」
「また難しいこと考えてるでしょ。キスしてもいい」
「バカッ……今はダメだ」
女は聞かなかった。立ち上がって、ノンアルコールのはずの缶を椅子に置いて、近づいてきて……団員達の前で、唇にそっと、口付けをしてきた。
「……ッ」
拒もうと思えば、拒めた。けれど、女の真剣で、真っ直ぐな目に見つめられて、体が動かなかった。
「はい。もう、難しい事は考えないで」
団員達は皆ニヤニヤして、歓声を上げる。
「キャーッ!」
「教官殿ーッ!」
「アツアツだーッ!!」
もう、何を返す気にも、考えるつもりにもならなかった。
~ 11/12 ~