「全く、こうなってしまっては仕方ないな。今日は無礼講だ。私にも酒を持ってこい。缶ビールでいい。教官殿には、ノンアルのものを。マイムにもジュースくらい飲ませてやれ」
「アイアイサー!!」
「ボスのお許しが出たぞー!」
「酒もっと買ってこーい!!!」
おお〜!! と皆の声が上がった。並べられた椅子の、適当な場所に座る。女はくすくすと笑って、マイムを胸に抱いている。マイムは浮かない表情で、ため息をついた。
「お前もそんな状態だし、こうなってはもう終わるまで待つしかないだろう。私も居なかった訳だし、たまにはこんな日があってもいい。そう、しょげるな」
マイムの頭をぺたぺたと撫でる。
「モン……キュウ……」
マイムの顔に、少し笑顔が戻った。
モニターの中では、笑顔を浮かべた自分が流暢に喋る。編集された字幕が画面の下部に流れる。ああ、本当にこれに出演したんだなという事を実感した。不思議な感覚だった。何人がこれを見たのだろうか。ジムリーダー共も、見たのだろうか。
周りの団員達は、モニターの自分が喋るたびに大騒ぎを繰り返している。もう何度も、繰り返し見ているだろうに。
「……これ、何周目だ?」
「たぶん5周目っすね」
「見てて面白いのか」
「かなり!!」
「最高ッス!!」
「……そうか……」
「ボス、恥ずかしい?」
女が気遣って聞いてくる。確かに、恥ずかしさはあった。だが、団員達のこの盛り上がりようを見ると、善行をしたような気分にもなる。
「そうだな。これだけ何度も見ると、もう恥ずかしさは無くなった」
どうしてか誰も、逃げ出した自分を咎める者は居なかった。先程の女の言葉を思い出す。そういうところも、自分だから。みんな好きだと。きっと。
~ 10/12 ~