ステージ!/贈るなら、ありったけの宝石を

鐘屋横丁

     

「……分かったよ。難しい事は考えない。今日は共に、この乱痴気騒ぎを楽しむとしよう」
 女は、満足げに笑う。本当に酒を飲んでいないのだろうか。普段は見せない大胆さに、少し不安になる。
 ……いや、単に大胆になって来たのかもしれない。嫌な事ではなかった。そういう女の方が、分かりやすくて自分は好きだ。
「ウヒョー!」
「サカキ様、バンザーイ!」
「飲むもの足りてますか? もう1缶!」
 団員達はより一層の盛り上がりを見せた。

 モニターの、知らない顔をした男が喋る。知らない男が喋る度に、団員達は声を上げる。女が笑う。難しい事は、もう考えない。安い酒が、頭に心地よい霞をかけて来る。
 多くの笑顔が、そこにはあったし、自分もきっと、笑顔だった。

そうして、その日の夜は、深くなっていった。


~ 12/12 ~