ステージ!/贈るなら、ありったけの宝石を

鐘屋横丁

     

 アジトの、皆がいるという部屋に戻った。
……そこは、何もかもが、滅茶苦茶な様相だった。
 大きなモニターには——もう放送は終わっただろうから、録画した内容だろうか——チカゲと自分が映っている。
 音量がだいぶ大きい。アジトが地下で本当に良かった。
 辺りは、とにかく酒臭い。安い酒の臭いが充満している。
 団員達は、大盛り上がりだ。モニターの自分が喋れば、その度に大声を上げている。
「メタ……!!」
 1匹のメタモンが、こちらに近づいてくる。
「マンマ、モン、キュー、キュー」
 手足をばたつかせながら、何かを訴えている。サカキ様、申し訳ありません。きっと、そんなところだろう。
「マイムか。酒を飲まされたな」
「キュウ……」
 マイムは、酒を飲むと変身能力が落ちる。普段は飲まないようにしているはずだが、今夜なら良いと思ったのか、あるいは誰かに無理矢理飲まされたのだろう。
「あ、サカキ様だー!」
「サカキ様ー!!」
「どこ行ってたんですかー!!」
「最強のジムリーダーのお帰りだー!!」
 こちらに気づいた団員達が、やんややんやと騒ぎ立てる。やれやれだ。仕方ない。こういうのも、たまには良いだろうという気になってきた。
「酒を持ち込んだのは、誰だ。リュックか、カナビか、ハルツか」
「全員でーす!!!」
 酒好きの3人が、仲良く返事をする。
「マイムに酒を飲ませたのは?」
「さぁ〜?」
「雰囲気で酔ったんじゃないですか?」
「学級委員長もたまには飲みたかったんでしょ〜」
 学級委員長。そう、呼ばれているのか。口うるさいマイムは、団員たちにとっては確かにそうかもしれない。


~ 9/12 ~