ステージ!/贈るなら、ありったけの宝石を

鐘屋横丁

     

 ……実に面白い質問だ。今までのくだらない質問より、何倍も価値があるだろう。思わず笑いたくなる気持ちを抑えた。
「……そうですね、彼らの事は私も耳にはしています。到底許せる事ではないですね。ただ、彼らがそうなってしまった背景も考えなくてはならないと、私は考えます」
「ほう、背景」
 チカゲが、真面目な表情をする。
「かつては彼らも、夢を抱いたポケモントレーナーだったはずです。何かで挫折して、何処かで夢破れてしまったのでしょう。
 そんな時、ロケット団などというごろつきになることなく、上手く社会に復帰できる仕組みが有れば良いのかなと、そう思います」
 チカゲは笑顔になり、大きな拍手をした。
「素晴らしい!! 素晴らしい考えですよ、サカキさん! 社会問題として、深くお考えとは! 偉い人達には、是非ともそこまで考えてもらいたいですね」
「ただの田舎のジムリーダーの、一意見ですよ。勿論、上の人が同じことを考えてくれたら、嬉しいですけどね……。」
 これだけは、本音に近かった。
 入団希望者は増え続けている。組織は、どんどん大きくなっている。どこまで個人の面倒が見切れるか、わからない。組織に属せず、社会的に復帰出来る者がいれば、それでいいと思う。他の道を見つけて、組織を去る。今までも何度か、そういう者はいた。
「ブラボー! さて、良いお話が聞けたところで、名残惜しいですが本日はここまでです。サカキさん、ありがとうございました!」
「はい、ありがとうございました」
「是非また、いらして下さい」
「ええ、機会があればいつでも」
「チカゲ・ルーム、本日はここまでです。皆様、良い夜を!ありがとうございました〜」
 チカゲが、カメラに手を振る。合わせて、自分も手を振る。
「カット! お疲れ様でした〜」


~ 7/12 ~