部屋に入り、まずは風呂に入った。服を脱ぎ、身体を洗い、湯船に浸かる。
「どうしたの? 今日は随分楽しそう」
「分かるか。そうか。キミに会えて、嬉しいんだ」
「わたしは、いつも会えて嬉しいよ」
「では、同じだな」
「うん」
女が、にこりと笑う。
「タマムシのジムリーダーに、キミと一緒にいる姿を見られたらしい。茶化されたよ」
「えっ! 大丈夫?」
「ふん、構うものか。俺が選んだのはキミだし、キミが選んだのは俺だ。何も恥じる事はない」
「……うん」
女は照れた顔になったが、その後はキッと真剣な顔になった。
「全く、下らない会議だったよ。人のプライベートをほじくり返す暇があったら、ポケモンの育成談義でもすればいい。
だから、どいつもこいつも、挑戦者に容易く敗れるのだ。挙げ句の果てには負かした挑戦者にもバッジを与えろと抜かす。随分とまあ、腑抜けの集団に落ちぶれたものだ」
ふう、とため息が漏れる。女はくすりと笑った。
「へえ、そんな事言うんだ」
「ああ。馬鹿らしいだろう? 俺が一番真面目にやってるような気さえしてくる」
「真面目なんだと思うよ、実際」
「ふん。平和ボケもいいところだ。ロケット団としては、その方が都合が良いがな。
どうだ。お気楽ジムリーダー共を蹂躙出来るような軍団は、作れるか」
「はい、ボス。必ず。訓練は、順調です」
「キミがそう言うなら、そうなのだろう。好い。キミは、有能なところが」
「ありがとうございます」
髪を、優しく撫でる。女は嬉しそうだ。
こうして、甘い時間をくれる。それでいて仕事はしっかりとこなす所がたまらなく好きだった。
若いだけの女や、美しいだけの女は散々抱いてきたが、どうにも気に入らなかった。少し過ごすと、重さを感じる。特に、他の事を考えている時に構って欲しがる女は苦手だった。女とはそういう、ある程度の重さを持った生き物なのだと、半ば諦めていた。
目の前にいる女は、そういった面倒臭さとは無縁だった。若いのに——あるいは、若いから、そうなのかもしれない。染まり上がる途中なのだ。自分の、都合の良い女として。
「上がるぞ」
「うん」
こうして、唐突に物思いにふけたとしても、何も言わない。好い、女だ。
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